宝石名 | アイオライト |
英名 | Iolite |
和名 | 菫青石(きんせいせき) |
鉱物名 | コーディエライト(cordierite) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
化学組成 | マグネシウムとアルミニウムの珪酸塩鉱物 |
化学式 | Mg2Al3(AlSi5O18) |
結晶系 | 直方晶系(斜方晶系) |
モース硬度 | 7-7.5 |
靭性 | 普通 |
劈開性 | 明瞭 |
比重 | 2.5-2.8 |
屈折率 | 1.53-1.57 |
分散度 | 0.017 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | ブルー、バイオレット、ブルーグレー、グレー |
誕生石 | 3月の誕生石 |
石言葉 | 自己同一性-誠実-貞操 |
3月の誕生石、アイオライトとは?
アイオライトは3月の誕生石です。
アイオライトは鉱物学的には「コーディエライト(cordierite)」と呼ばれる鉱物で、化学組成がマグネシウム・鉄・アルミニウムの珪酸塩鉱物、化学式は(Mg,Fe)2Al3(Si5AlO18) – (Fe,Mg)2Al3(Si5AlO18)、結晶系は直方晶系(斜方晶系)、モース硬度7-7.5の半貴石・準宝石で、「アイオライト(Iolite)」名は宝石名です。
和名「菫青石(きんせいせき)」の名前のとおり、「菫(スミレ)」の花を思わせる、紫がかったブルートーンを呈する宝石で、色合いがサファイアに似ていることから「ウォーター・サファイア」とも呼ばれています。
アイオライトは見る角度や光源や明るさ等の条件によって色合いが変化する「多色性(たしょくせい)」=「プレオクロイズム(pleochroism)」の特性を示すことから、「2つの色を持つ石」という意味の「ダイクロアイト(dichroite)」の別名を持ちます。
アイオライトの示す多色性の特性が曇りの日に太陽の方向を知るために役立つことから、古代のスカンジナビアのバイキングが航海の際にこの目的でアイオライトを使用していたと言われており、「バイキングの羅針盤」や「バイキングの石」と呼ばれ、次第に航海のお守りとされるようになりました。
また、多色性の特性を示すアイオライトは、物事をあらゆる角度からとらえる大切さを教えてくれる宝石としても知られています。
アイオライトの光学現象
アイオライトは一般的に透明度が高く、内包物(インクルージョン)は比較的少ない宝石ですが、内包物(インクルージョン)を多く含む場合には、様々な光学現象がみられることがあります。
内包物(インクルージョン)を多数含むアイオライトの場合、光を反射させてキラキラとしたメタリックな輝き見せる「アベンチュレッセンス」がみられることがあり、「アイオライト・サンストーン」や「ブラッドショット・アイオライト」の名称で販売されていることもあります。
アイオライトの内包物(インクルージョン)には、褐鉄鉱(かってっこう)グループの鉱物、鱗鉄鉱(りんてっこう)=レピドクロサイト(lepidocrocite)による赤色~褐色の針状・粉状の内包物(インクルージョン)や、赤鉄鉱(せきてっこう)グループの鉱物であるヘマタイト(hematite)による銀色、赤色~赤褐色~褐色の針状・粉状の内包物(インクルージョン)などがあります。
また、一方向に平行に並んだ針状結晶(ルチル)の内包物(インクルージョン)を含むアイオライトで、キャッツアイ効果が見られるものは「アイオライト・キャッツアイ」と呼ばれることもあります。
アイオライトの意味とは?宝石名の由来について
アイオライト(iolite)の宝石名の語源は、古代ギリシャ語で「紫色」の意味を持つ単語「ῐ̓́ον (ion)」と、ギリシャ語で「鉱物」や「化石」を意味する接尾辞の「-lite」に由来します。
花名の「ビオラ (viola)」や色名の「バイオレット (violet)」は、「ῐ̓́ον (ion)」が語源となったとされています。
「ῐ̓́ον (ion)」はギリシャ神話に登場する主神ゼウスの恋人の一人であった「イオ(io)」の名前に関連しているともいわれています。
ギリシャ神話において、ゼウスには正妻の女神ヘラがいましたが、イオに一目惚れして浮気をしてしまいます。
ヘラに浮気を勘付かれたゼウスは、イオの姿を美しい白い牛に変えて、ヘラの目を欺こうとします。
しかし、その牛がイオの化身であることはヘラに見透かされており、ヘラは様々な手段を用いて彼女を捕らえようとしました。
イオはヘラから逃れるために牛の姿のまま世界中をさまよい歩くこととなりました。
イオが地上をさまよう中、ゼウスはイオの悲しみを癒やすために、彼女の足元に美しい花を咲かせ、この花はイオの心を和らげ、彼女を慰めたとされ、この花の色が紫色であったといわれています。
イオの名は、木星の第1衛星の名前にも使われています。
木星の第1衛星は、1610年にイタリアの天文学者「ガリレオ・ガリレイ氏(Galileo Galilei)」によって発見されましたが、この衛星をイオと名付けたのはドイツ人の天文学者「シモン・マリウス氏(Simon Mariu)」です。
ギリシャ神話のゼウスは、ローマ神話ではジュピター(Jupiter)と名付けられていることから、木星の衛星にゼウスの愛人であったイオの名が付けられました。
コーディエライトの意味とは?名前の由来について
アイオライトの鉱物名、コーディエライト(cordierite)の名前は、フランスの地質学者・鉱物学者のルイ・コルディエ氏(Pierre Louis Antoine Cordier)に敬意を表し、献名として命名されたもので、「Cordier(人名:コルディエ)」+「-ite(鉱物を意味する接尾辞)」に由来します。
鉱物名・宝石名の命名ルール
新種の鉱物は、鉱物学の発展と約5,000種の鉱物名の統一を目的とする国際組織である「国際鉱物学連合(IMA: International Mineralogical Association)」の「新鉱物・鉱物名委員会 (CNMNC: Commission on New Minerals, Nomenclature and Classification)」において審査を受け、その承認を得る必要があります。
新しい化学組成・結晶構造を持つ鉱物を発見した場合は、その地質作用や科学的根拠を明記した申請書を委員会へ提出します。
申請の際に鉱物の名前(学名)も自ら提案できますが、発見者の名前をつけてはいけないというルールや、一部の鉱物グループには命名規約が存在することもあります。
多くの場合は、地名・献名・特徴的な外観・化学組成などに由来するものが多く、名前の最後に「-ite」や「-lite」を付けます。
「-ite」や「-lite」は「鉱物」や「化石」を意味する接尾辞で、「石」の意味を持つギリシャ語「リトス(lithos)」が語源となっています。
委員会は提出された申請書に基づいて鉱物と鉱物名・命名理由を数ヶ月かけて審査され、承認されると新鉱物が誕生します。
新しい誕生石に選ばれたアイオライト
2021年12月20日に日本の誕生石が改訂され、アイオライトは新しく誕生石に加えられることになり、従来より3月の誕生石だったアクアマリンとともに、アイオライトも3月の誕生石になりました。
日本の誕生石は1958年に全国宝石卸商協同組合によって制定されたもので、日本の誕生石が改訂されるのは実に63年振りのことになります。
最新版の誕生石についての詳細はこちらのページをご覧ください。
アイオライトの石言葉・宝石言葉
アイオライトの石言葉・宝石言葉は、自己同一性-誠実-貞操。
インドやスリランカでは古来より宝石を用いたセラピーやヒーリングといった宝石療法の文化があり、宝石には病気や怪我、三毒と呼ばれる”三つの煩悩(ぼんのう)”である、貪欲(とんよく: 貪り・妬み)・瞋恚(にんし: 怒り・憎しみ)・愚癡(ぐち: 愚かさ・無知)などから保護する厄除けや加護の力や宿ると考えられてきました。
古代の王族が身につけていた宝石は純粋な装飾用ではなく、身につける人の富や権力を高めるとされる宝石の力が信じられたためです。
ナヴァラトナ(navaratna)と呼ばれる、インドやスリランカをはじめとするアジア地域の国で神聖なものとして認識されているアミュレット(お守り・魔よけ・護符)においては、アイオライトは土星を表す宝石とされています。
ナヴァラトナは太陽系の9つの惑星と、それを神格化した9人の神の”ナヴァグラハ=九曜”が割り当てられた”9つの宝石(ナインストーン)”があしらわれた装身具です。
土星は太陽を周回する速度が非常に遅い惑星であることから、「保つ」という意味のサンスクリット語の「ダー(dhṛ)」の派生語とされる、秩序と理法を意味するインドの思想の「ダルマ(dharma)」を象徴する惑星と位置付けられています。
ナヴァラトナにおいて土星を司る宝石は身につける人に、現世に持ち込んだカルマを受け入れることを促し、カルマに打ち勝つをサポートしてくれると信じられており、試練を与えて精神的な道を歩むように導くことで、寛容さと謙虚さを得るために役立つと考えられています。
石言葉・宝石言葉とは、一つ一つの宝石に与えられた言葉のことで、各々の宝石の持つ特質や歴史・言い伝えなどから、象徴的な意味をもつ言葉が選ばれています。
石言葉・宝石言葉には、各々の宝石の持つ特質や色が与える心身への影響が研究された心理学が応用されていますので、自身が受ける心理的影響を生かしたセルフマネジメントや、他人に与える心理的影響を活かした印象戦略などに活用することができます。
アイオライトの言い伝え
「ビジョンの石」とも呼ばれるアイオライトは、穏やかな心で自分自身を客観的な視点で見つめ、心の底にある真の心の声を聴くことで、自身の「アイデンティティ」を取り戻す助けとなってくれると考えられています。
「アイデンティティ」とは、アイオライトの石言葉・宝石言葉にある「自己同一性」のことで、心理学においては「自分は自分であると自覚を持つこと、自分が何者であるかを認識すること」という概念でのことです。
そのため、人生において迷いが生じたときには正しい方向を指し示す羅針盤となって、夢や目標に到達するための道しるべとなり、進むべき方向に導いてくれると伝えられています。
また、落ち着いたブルートーンの色合いから、悲しみや怒りなどネガティブな感情や、不安や心配な気持ちを鎮めて、心に安定感をもたらしてくれると信じられています。
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