■貝パールとは? 貝パールの特徴について
貝パールとは、本真珠を模した「イミテーションパール」の一種で、養殖真珠の核に使われているのと同じ、天然の貝殻を削って成形加工した貝核を原珠に用いて作られた「模造真珠」のことです。
天然の貝殻=「シェル」でできた原珠に、真珠様の光沢を呈するパール塗料を塗装して作られているため、別名「シェルパール」とも呼ばれています。
貝パールの原珠には、本真珠の養殖で使われているものと同じ天然貝核が使われていることから、貝パールは本真珠と同様の適度な重みがあり、プラパール(樹脂パール)などの他のイミテーションパールと比べて、見た目が自然です。
貝パールは生産コストが安価な途上国など、世界でも生産されていますが、日本においては熟練の技術が継承された「伝統工芸品」とも称される高品質な貝パールが生産されています。
日本産の貝パールは、パール塗料を複数回に分けて何度も繰り返し塗り重ねることで、人為的に真珠層を作り出すようにパール塗料の層を均一に厚くしているため、表面が滑らかに仕上がっています。
上記の工程を経て販売される貝パールは「普通塗り」と呼ばれます。
さらに、普通塗りの貝パールの表面に「磨き」と呼ばれるポリッシュ加工を施した「ミガキ貝パール」や「ミガキパール」と呼ばれる、貝パールの最上位品があります。
ミガキ貝パールは、表面が艶やかに磨かれることでオーロラ様に輝く干渉色が生まれ、まるで本真珠のようなテリと光沢感が再現されていることから「人工パール」とも呼ばれています。
このため、ミガキ貝パールは冠婚葬祭や入学式・卒業式、パーティなどのオケージョンシーンでのフォーマルファッションから、デイリーユースのアクセサリー用途まで、流行・季節・年齢を問わず気軽に身につけることができる上質なイミテーションパールとして定評があります。
■イミテーションパール・貝パールの歴史
イミテーションパールの歴史は古く、1656年にフランスで作られた、中空の硝子の玉の内面にパール塗料を塗り、白蝋を詰めたものが世界初のイミテーションパールと考えられています。
1900年頃には欧米各国でイミテーションパールが作られるようになり、日本には明治末期頃に伝わり、大阪商人の大井徳次郎氏によってタチウオの鱗の魚鱗箔(ぎょりんはく)を使ったパール塗料「パールエッセンス」を用いたイミテーションパールの生産がはじまったといわれています。
大正に入るとガラスの原珠にパール塗料を塗り重ねた「ガラスパール」が作られるようになり、その後プラスチック樹脂の原珠を使った「プラパール(樹脂パール)」が作られるようになり、昭和40年代頃より原珠に天然貝核を使った「貝パール」が作られるようになったといわれています。
↓こちらの記事にイミテーションパールの歴史について詳細をご案内しております。
■貝パールの作り方・製造方法
天然貝核にパール塗料を塗り重ねて作られる貝パールは、パール塗料そのものの品質や調色、パール塗料を塗布する技術によって、色合い・輝き・光沢感などの仕上がり=品質クオリティに差が生じます。
現在では生産コストが安価な途上国で生産された貝パールも日本国内に流通していますが、パール塗料の品質や調色が今一つだったり、パール塗料の塗りが薄かったり、塗りムラがあったりと、日本国内の工房で仕上げられたものに比べて見劣りするという印象です。
一方、日本国内の工房では、原珠の通ったワイヤーを木枠に間隔を空けて張り、塗装の表面に気泡ができてしまわないよう、静かにパール塗料の水槽に木枠ごと浸しては乾燥室で乾燥させ、またパール塗料に浸しては乾燥室で乾燥させる、という昔から変わらない大変手間のかかる丁寧な手仕事を繰り返すことで、人工的な真珠層を作りだすようにパール塗料の層を厚くしていきます。
このため、日本産の貝パールはパール塗料の層が厚く、厚みがも均一に仕上がっており、表面も滑らかです。
上記の工程を経て販売される貝パールは「普通塗り」と呼ばれています。
■ミガキ貝パールとは?
普通塗りの貝パールの表面に、「磨き」と呼ばれるポリッシュ加工=オーロラ加工を施した最上位品が「ミガキ貝パール」です。
ミガキ貝パールは、表面が艶やかに磨かれることでオーロラ様の多彩な干渉色の輝きが生まれ、本真珠のような照りと光沢が再現されていることから「人工パール」とも呼ばれます。
日本産のミガキ貝パールは熟練の技術が継承された「伝統工芸品」とも称される、最も上質なイミテーションパールで、冠婚葬祭や式典などのオケージョンにおけるフォーマルな装いに対応するため一定の需要があります。
しかしながら、ミガキ貝パールを作成する設備と技術を持つ職人は今や日本に3名しかいないことや、原料費がかかるうえ、作業工程も多く、製造コストが高くなってしまうことから、価格競争が広まる現代においては、生産背景や品質よりも安さが最優先されることが多くなったため、生産量・流通量が減少しています。
■貝パールと本真珠の見分け方
貝パールのルースやビーズは、塗料により穴の周りが盛り上がっている物が多いですが、本真珠の穴は平坦でシャープです。
貝パールにはサイズや形状・色合い・照り・輝きの個体差はあまり見られませんが、本真珠はサイズや形状・色合い・照り・輝きなどに微妙な個体差があったり、エクボや突起のようなでっぱり、しわ・たるみのように表面がなめらかではない等の個体差が見られることがあります。
貝パールの表面はツルツルで全く引っかかりを感じませんが、本真珠の貝パールと比べると少しだけザラっとした引っかかりを感じます。
こちらの画像、右の2粒が本真珠で無調色ナチュラルブルーの花珠アコヤパール【オーロラ真多麻真珠】の丸玉ラウンドΦ8.5mmのルース。
左の2粒がオーロラ真多麻真珠を模した弊社オリジナルのイミテーションパール、ブルーグレー系の国産のミガキ貝パールの丸玉ラウンドΦ9mmのルースです。
マクロ撮影した画像で比較してみると、表面の見た目にも微妙に違いがあるのがお分かりになると思います。
■貝パールと本真珠の違いとは?
本真珠の真珠層は、炭酸カルシウムの層とタンパク質の層がレンガの様に幾重にも積み重なってできていますが、炭酸カルシウムもタンパク質も酸に弱いため、人間の皮膚や皮脂・汗などの弱酸性の汚れに接触していると、徐々に真珠層が変質してしまうことから、本真珠はお手入れを怠ると、真珠の表面が白濁化し、本来の照りや輝きが鈍くなってしまう、経年変化(経年劣化)がみられることが広く知られています。
一方、貝パールは人間の皮膚や皮脂・汗などの弱酸性の汚れに強く、本真珠よりも硬度があるので傷付きにくく、耐久性に優れています。
また、本真珠は真球に近い形状で、且つ傷やエクボのみられない珠は希少なため高価ですが、貝パールは珠がほぼ真球の形状で、サイズも均一なうえ、傷や凹凸のみられるものはごく稀と、品質が安定しています。
貝パールは価格的な価値こそ本真珠には及びませんが、クオリティやコストパフォーマンスの点においては本真珠に引けを取りません。
■メイド・イン・ジャパンのイミテーションパールに思うこと
生産コストの安い開発途上国で作られる安価なイミテーションパールが世界のみならず、日本国内にも流通している中、日本の確かな技術と細やかな手仕事は世界的に高く評価されており、日本製のミガキパールは世界の宝飾業界において揺るぎない信頼と地位を築いており、その人気は世界最高のイミテーションパールとも称されるスペインのマジョリカパールにも肩を並べます。
日本製のイミテーションパールはかつて世界市場で高いシェアを誇り、世界中に輸出されていました。
しかしながら、安価に大量生産されている開発途上国のイミテーションパールに世界市場のシェアを奪われて輸出量は激減し、日本製イミテーションパールの生産量も減少して、業界全体が低迷してしまい、現在では後継者難により廃業してしまった工房も多く、代々の技術を継承している職人が年々少なくなってしまっているといいます。
開発途上国のイミテーションパールの顕著な躍進の背景には、日本製品に比べて品質面では劣っているものの、品質の違いよりも価格を重視する傾向にあるアメリカ市場においてシェアを著しく拡大させていることにあるようです。
弊社では、クオリティの高い国産イミテーションパールの需要拡大に少しでも貢献できたらと考え、国産のミガキ仕上げの貝パールをはじめ、日本国内の各工房と連携して共同開発した、花珠あこや真珠を模したオーロラ天女イミテーションのミガキ貝パール、オーロラ真多麻イミテーションのブルーグレー系のミガキ貝パール、復刻ヴィンテージ仕様のミガキガラスパールを通信販売しています。
■日本産ミガキ貝パールの商品のご案内
日本国内の工房にて作られた、ミガキ貝パールの片穴ルースパーツと両穴ビーズパーツは、弊社オンラインショップのネイチャーガイダンス・グリーン店とアートソースにて卸売り価格にて販売中です。
ご興味のございます方は、以下のリンクより弊社オンラインショップの商品ページをご確認下さいますようお願い致します。