宝石名 | スピネル |
英名 | Spinel |
和名 | 尖晶石(せんしょうせき) |
鉱物名 | スピネル/尖晶石(せんしょうせき) |
分類 | 酸化鉱物 |
化学組成 | マグネシウムとアルミニウムの酸化鉱物 |
化学式 | MgAl2O4 |
結晶系 | 等軸晶系 |
モース硬度 | 7.5-8 |
靭性 | 良好 |
劈開性 | 不明瞭 |
比重 | 3.6-3.7 |
屈折率 | 1.71-1.76 |
分散度 | 0.020 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | レッド、ピンク、パープル、オレンジ、ブルー、グリーン、ブラック、カラーレス 他 |
誕生石 | 8月の誕生石 |
石言葉・宝石言葉 | 勝利-成功-情熱-挑戦-不屈 |
■スピネルとは?
スピネル(Spinel)は8月の新しい誕生石です。
スピネルにはレッド、ピンク、パープル、オレンジ、ブルー、グリーン、ブラック、カラーレス(無色)など様々なカラーバリエーションがあり、中でも炎のような鮮やかなレッドスピネルが最も人気の宝石です。
スピネルは長年ルビーやサファイアの代替品として扱われてきた宝石ですが、スピネルの産出量はビルマではコランダムの約5分の1、パキスタンでは約10分の1程ともいわれ、コランダムよりも稀少な宝石です。
しかしながら、近年までスピネルの知名度は低く、消費者に広く認知されていなかったため、最も過小評価されてきた宝石の代表格となっていました。
近年になり、スピネルはルビーやサファイアとは似て非なる魅力を湛える宝石として評価されるようになり、レッドやピンク、ブルーのスピネルの人気が欧米を中心に急上昇しています。
その背景には、ルビーやサファイアの大半は色の改善のための加熱処理が施されていますが、加熱が施された処理石のコランダムにはあまり資産性がない一方で、未処理のコランダムは稀少性の高さから非常に高値で取引されていることにあります。
非加熱のものが大半なスピネルは、非加熱のコランダムに比べて市場価格が安価なことから、狙い目の宝石として注目されているためです。
そのためスピネルの市場価格は急騰しており、加熱処理が施された天然スピネルも少なからず市場に流通するようになってきています。
■スピネルの意味
宝石名のスピネル(spinel)の語源は”棘(とげ)”を意味するラテン語 “spina (スピナ)”に由来しています。
これはスピネルの結晶が八面体(8枚の三角形で構成される立体)の形状で、結晶の両先端が尖った形状であることに由来しています。
■スピネルの歴史
1783年、フランスの鉱物学者の”ジャン・バティスト・ルイ・ローマ・デ・ライル(Jean Baptiste Louis Rome de Lisle)”が、スピネルとルビーが別の鉱物であると世界で初めて明らかにし、それまでルビーとされていた複数の宝石が、スピネルと識別されるようになりました。
スピネルとコランダムは成分・成因が良く似ていることから産地と産状もほぼ重なることや、外観特徴だけではなく、比重や屈折率などの化学特性においても極めて近似していたため、永きにわたりレッドスピネルはルビーと、ブルースピネルはブルーサファイアと同一の宝石として扱われてきました。
そのため、歴史上で有名なルビーが実はレットスピネルであった例が多くあります。
その中でも「黒太子のルビー(Black Prince’s Ruby)」の名で知られる、140カラットの巨大ルビーがあしらわれた英国の王冠(14世紀半ばにエドワード黒太子がカスティーリャ国王ペドロ1世より譲り受けたとされる王冠)は、実際はレッドスピネルであった話は有名です。
■スピネルの特性
鉱物学的には、スピネル族(スピネルグループ)のスピネル系列に属する鉱物のうち、化学組成がマグネシウムとアルミニウムの酸化鉱物(化学式 MgAl2O4)の宝石質の結晶が宝石のスピネルとして扱われます。
スピネルは火成岩や接触変成岩に産しますが、スピネルはモース硬度が7.5-8と高いうえ、劈開性が認められず靭性にも優れるため、母岩が長い年月をかけて風化していく中、スピネルの原石は結晶形状を保ったまま漂砂鉱床に残されるため、摩耗されずに完璧な八面体結晶で発見された原石にはカットを施さず、表面をごく軽く研磨したのみの原石の形状のまま宝飾用に利用されることもあります。
このような美しい八面体型の天然スピネルは”エンジェルカット・スピネル”と呼ばれており、スピネルの鉱床があるミャンマーでは”精霊によって磨かれたもの”という意味のビルマ語 “Nat Thwe”の名で呼ばれています。
■スピネルの色
天然のスピネルの色合いは、赤色系(レッド、ピンク、ホットピンク、ネオンピンク)、青色系(ブルー、コバルトブルー、ティールブルー、スカイブルー、アイスブルー)、紫色系(パープル、バイオレット、ラベンダー)、緑色系(グリーン、ブルーグリーン、ミントグリーン)、オレンジ、ブラウン、ブラック、無色透明(カラーレス)、半透明(ミルキー)など多彩です。
天然スピネルでは黄色系のみ存在しませんが、ベルヌーイ法やフラックス法によって合成された人工石の合成スピネルでは黄色系を含む全ての色が存在します。
赤色系の色相は微量元素のクロムに起因するもので、クロムの含有量が高ければ高いほど、発色が強くなります。
バイオレットからブルーは鉄に起因するもので、コバルトブルーのスピネルの彩度の高い青色の色相は微量のコバルトに起因するものです。
オレンジやパープルの色相は、クロムと鉄に起因しており、比率によって色味も変化します。
■スピネルの価値
宝石の価値は微量元素の種類や含有量ではなく、宝石の色相・彩度・透明度・内包物の有無・大きさ・稀少性・需要で評価されます。
そのため、スピネルは色相によって価格が全く異なる宝石です。
無処理で色が濃く鮮やかでインクルージョンが極めて少ない上質なレッドスピネルともなると、その価格は別格です。
赤色系以外では、青色系のスピネルが高く評価されています。
■スピネルは新しい8月の誕生石
2021年12月20日に日本の誕生石が改定され、スピネル(尖晶石)が新しく8月の誕生石に追加されました。
そのため、従来より8月の誕生石であった”ペリドット(橄欖石・かんらんせき)”、”サードオニキス(紅縞瑪瑙・べにしまめのう)”、”スピネル(尖晶石・せんしょうせき)”の3種類の宝石が8月の誕生石となりました。
日本の誕生石は1958年に全国宝石卸商協同組合によって制定されたもので、日本の誕生石が改定されるのは実に63年振りのことでした。
誕生石(たんじょうせき)とは、1月から12月までの各月を象徴する宝石のことで、自分の生まれ月(誕生月)に割り当てられた誕生石をお守りとして身に着けることで幸運やご加護を願う、古くから世界で親しまれている習慣です。
誕生石の起原には諸説あり、そのルーツは定かではありませんが、誕生石の起源として最も有力な説として考えられているのが、約3500年前の旧約聖書における12種類の宝石の記述です。
旧約聖書には、ユダヤの祭司が身に着ける聖なる装束の胸当てに12種類の宝石を飾らなければならない、という旨の記述があり、これが誕生石のルーツになったと考えられています。
“自分の生まれた誕生月と同じ月を象徴する宝石を身に着けると神のご加護がある”という、現代に伝わる誕生石の概念の発祥は、16世紀から18世紀にかけてポーランドまたはドイツに移住したユダヤ人によるものといわれ、商売に長けるユダヤ人は貿易のために他国へと渡り世界へと広がっていきました。
誕生石の概念は世界に広がりましたが、日本、アメリカ、イギリスなど、それぞれの国情に合わせて宝石の種類に若干の違いがあります。
誕生石は、指輪・ペンダントネックレス・ピアス・イヤリングなどのジュエリーまたはアクセサリー、あるいはブローチやネクタイピンなどの装身具として携帯されることが多いです。
誕生日や記念日、人生の節目に自分自身で誕生石を購入される方も多いですが、プレゼントとして家族・恋人・友人などの大切な人に愛情や友情など気持ちを込めた贈り物にも最適です。
最新版の誕生石についての詳細はこちらのページをご覧ください。
■スピネルの石言葉・宝石言葉
スピネルの石言葉・宝石言葉は、勝利-成功-情熱-挑戦-不屈。
石言葉・宝石言葉とは、一つ一つの宝石に与えられた言葉のことで、各々の宝石の持つ特質や歴史・言い伝えなどから、象徴的な意味をもつ言葉が選ばれています。
石言葉には・宝石言葉には、各々の宝石の持つ特質や色が与える心身への影響が研究された心理学が応用されていますので、自身が受ける心理的影響を生かしたセルフマネジメントや、他人に与える心理的影響を活かした印象戦略などに活用することができます。
■スピネルのパワーストーン的な効果
スピネルは原石の結晶が棘のように尖った形状をしていることから”鋭さ”を象徴する宝石とされます。
洞察力や素早く的確な判断を下すための意思決定力を高めてくれるので、仕事やスポーツなどでリーダーシップを必要とするポジションに就いている方におすすめのパワーストーンです。
感性・感覚を鋭敏に研ぎ澄まし、古い考えに縛られることなく、常に新しいアイデアを生み出す発想力を高めてくれるので、クリエイティブな思考を必要とする方にもぴったりです。
■スピネルのスピリチュアルな意味
燃えるようなレッドスピネルは他の赤色の宝石と同様に、第1チャクラと関連している宝石とされています。
チャクラ(cakra、chakra)とはサンスクリット語で”輪”や”環”の意味で、人体の中枢にあるとされ、目には見えないエネルギーが巡回している通り道を指す言葉として用いられます。
第1チャクラはムーラーダーラ・チャクラ(muladhara chakra)やルートチャクラ(root chakra)と呼ばれ、背骨の一番下、尾てい骨付近にあるとされます。
第1チャクラには蜷局を巻いた炎の蛇の姿をした女神のクンダリニー(Kundalini)が眠っているとされます。
クンダリニーは性的なエネルギーを司るとされ、人体内の根源的な生命力の基盤になるものとされています。
クンダリニーが覚醒すると生命エネルギーと宇宙のエネルギーとが調和し、価値観や世界観が大きく変化すると考えられています。
レッドスピネルなどの赤色の宝石は、情熱的で自信に溢れている炎の女神のクンダリニーを象徴する宝石と考えられています。
身に着けることで自信に満ち溢れ、自己肯定感が高まり、エゴ(自我)を捨て、他の人に献身的になることを助けると言われています。
また、肉体的なエネルギーと精神的なスタミナを増加させる効果があるとされ、長寿を促すとも考えられています。
夢を実現させたり、成功への道を切り開くために、意欲的に目標に向かって進んでいくためのパッションとモチベーションを高めるともされています。
■スピネルの産地
現在スピネルの主な産出国となっているのは、ミャンマー、スリランカ、タンザニア、マダガスカル、ベトナム、パキスタン、タジキスタンなどです。
古来から現在に至るまで、品質・産出量ともにミャンマーとスリランカがスピネルの主要な産地となっていますが、特にミャンマーでは「ピジョン・ブラッド(鳩の血)」と呼ばれる最高品質のルビーを彷彿とさせる鮮やかな濃いレッドのスピネルや、蛍光性の強いホットピンクのスピネルなどを産出することから、他の産地を寄せ付けない人気があり、最高級品として高値で取引されています。
世界有数の宝石産出国となっているタンザニアでは、2000年代に入ってから良質なスピネルが産出されるようになり、近年注目度が上がっています。
ミャンマーに次いで有名な産出国はスリランカで、ピンク、ブルー、パープルなど多彩なスピネルや、キャッツアイやカラーチェンジ、スター効果などといった特殊効果を有した珍しいスピネルを産出しています。
スリランカの宝石採鉱では、漂砂鉱床からillamaと呼ばれる宝石を含んだ砂利層を採鉱し、illamaを洗浄して泥・砂・砂利を取り除いたものはnambuwaと呼ばれます。
様々な種類の宝石と小石とが混ざり合うnambuwaに太陽の光を当てて、宝石原石の水磨礫(すいまれき)をのみを採取します。
illamaからは、コランダム、スピネル、ベリル、トルマリン、ガーネット、トパーズ、ジルコン、クリソベリル、アレキサンドライト、カイヤナイト、クォーツなど、色とりどりの様々な種類の宝石原石の水磨礫が産出します。
■スピネルのデザイン
スピネルはカラーバリエーションが豊富な宝石のため、宝飾デザインにおいて多目的に使用されています。
スピネルは様々な形にカットされますが、オーバルとクッションのシェイプが特に人気です。
■ブラックスピネルについて
“ブラック・スピネル”と呼ばれる黒色を呈するスピネルは、ヴィクトリア朝時代においてモーニング・ジュエリー(喪に服する期間に身につけられる装身具)に用いられていた宝石の一つです。
1837年から1901年の64年間にわたりイギリスを治世していたヴィクトリア女王が、夫君のアルバート公の喪に服したときに、「ジェット(黒玉-こくぎょく)」をあしらったモーニング・ジュエリーを25年にも亘り身につけていましたが、黒く不透明な宝石をあしらったモーニング・ジュエリーには哀悼の意を示す意味合いもあることから、イギリスを中心にヨーロッパの貴族間でモーニング・ジュエリーが流行し、後の19世紀のヨーロッパでは、喪中でなくともモーニングジュエリーが身に着けられるようになっていきました。
カット加工を施すことで受けた光を強く反射させるブラックスピネルの美しい輝きはブラックダイヤモンドにも匹敵するともいわれ、数あるブラックカラーの宝石のなかでも特に人気があり、近年ではメンズジュエリーのみならず、モダンなレディースジュエリーための宝石としてや、パワーストーンとしての需要も高まってきています。
■スピネルの取り扱いについて
スピネルはモース硬度が 7.5-8 と高いうえ、靭性にも優れることから、日常的に身に着けたいジュエリーやアクセサリーに使用するには十分に耐久性がある宝石といえます。
クラックがある場合を除いて、超音波洗浄器を使用することも可能ですが、スピネルは化学薬品にさらされても安定していますので、ジュエリー用の液体クリーナーを使用することで安全にクリーニングすることができます。
高温により色褪せするスピネルも一部ありますので、熱の加わる処理は避けた方が無難です。
※モース硬度とは、鉱物に対する硬さの尺度のことで、表面の傷つきやすさを表しており、日常の摩耗に対する耐久性に関係します。モース硬さやモース硬さスケールともいいます。
※靭性(じんせい)とは、物質に対して力が加わった際に吸収できるエネルギー量の尺度のことで、衝撃などに対する抵抗力・割れにくさを表しています。
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