宝石名 | アクアマリン(アクワマリン) |
英名 | aquamarine |
和名 | 藍玉(あいだま、らんぎょく)・水宝玉(すいほうぎょく) |
鉱物名 | 緑柱石(りょくちゅうせき)・ベリル(beryl) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
化学組成 | ベリリウムとアルミニウムの珪酸塩 |
化学式 | Be3Al2Si6O18 |
結晶系 | 六方晶系 |
モース硬度 | 7.5-8 |
靭性 | 7.5 |
劈開性 | 一方向に微弱 |
比重 | 2.6-2.9 |
屈折率 | 1.57-1.59 |
分散度 | 0.014 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | アクアブルー – ブルーグリーン |
誕生石 | 3月 |
石言葉・宝石言葉 | 聡明-勇敢-沈着 |
3月の誕生石、アクアマリンとは?
アクアマリンは3月の誕生石。
海を連想させる青色系の色調の緑柱石(ベリル)の宝石で、和名は”藍玉(あいだま、らんぎょく)”または”水宝玉(すいほうぎょく)”。
モース硬度7.5~8と比較的硬く、靭性も高いため、ジュエリー用として耐久性のある宝石です。
現代の日本では女性に人気の宝石ですが、古代より船乗りのたちが航海の安全を祈願するお守りとして身に着けていた宝石でもあります。
アクアマリンの世界最大の鉱床はブラジルのミナス・ジェライス鉱山です。
その他、世界中で発見されており、パキスタン、ケニア、ザンビア、ナイジェリア、マダガスカル、モザンビーク、中国、ミャンマー、ロシア、ウクライナ、アメリカなどでも採掘されています。
↓こちらの別ページにてアクアマリンについて詳細をご案内しております。
アクアマリンとは?Aquamarine 水宝玉 藍玉
アクアマリンの特性について
アクアマリンは鉱物学的にはエメラルドと同じ”緑柱石(りょくちゅうせき)”=”ベリル(beryl)”に属する鉱物で、化学組成はベリリウムとアルミニウムの珪酸塩、化学式はBe3Al2Si6O18で表されます。
緑柱石(ベリル)の中でも鉄に起因して薄水色~水色~濃水色を呈するものがアクアマリンに分類されます。
アクアマリンの青色は、結晶の内包する微量元素の含有比率や含有量によって、色調や色の濃淡に違いが出てくるため、アクアマリンの原石の色は濃い水色~淡い水色のものまで、意外と思えるほど幅広くあります。
アクアマリンは色の濃度が高く、かつ透明度の高いものが宝石としての価値が高く評価される傾向にあります。
市場に流通している一部のアクアマリンにはグレーがかっていたり淡いグリーン色のものを加熱して青色を引き出したものもありますが、これは原石が元々内包していた鉄を反応させているだけで、加熱処理により色の濃淡を変化させることはできません。
アクアマリンの意味とは?名前の由来
“アクアマリン(aquamarine)”の名前の語源は、ラテン語で水を意味する”アクア(aqua)”と海を意味する”マリン(marin)”に由来します。
アクアマリンの宝石名はローマ人によって初めて使われるようになったと言われており、1609年に出版された鉱物学者のアンセルムス・デ・ブート(Anselmus de Boodt)の著書”宝石と宝石史(Gemmarum et Lapidum Historia)”がアクアマリンの名が書かれた最古の文献とされています。
アクアマリンとアクワマリンは同じ宝石?
2021年10月8日、宝石鑑別団体協議会(AGL)と日本ジュエリー協会(JJA)が、「宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法」の内容変更のお知らせを発表しました。
2021年11月より、宝石の鑑別書に記載されるカタカナ表記の名称を、一般に使われることが多い名称に統一して変更するというものです。
外国語のスペルや発音を仮名で表すのは難しく、「aquamarine」のカタカナ表記には「アクアマリン」と「アクワマリン」が混用されていて、どちらも間違いではありません。
以前は、「aquamarine」は鑑別書に「アクワマリン」と記載されていたのですが、今後は宝石の鑑別書に記載されるカタカナ表記の名称は、より一般的と思われる表記の「アクアマリン」に変更されます。
宝石の色について
宝石の色の発色には「自色」と「他色」の二種類があります。
自色とは、結晶を組成する主成分に起因して色を発色している鉱物で「イディオクロマティック(idiomatic)」とも言います。
自色を示す宝石はあまり多くはなく、ペリドット、アルマンディン・ガーネット、マラカイト、クリソコラなどがこれに該当します。
他色とは、結晶を組成する主成分以外に起因して色を発色している鉱物で「アロクロマティック(allochromatic)」とも言います。
純粋な結晶が無色透明の宝石は他色のものが多く、宝石の大半は他色を示す宝石に分類されます。
他色の宝石では微量元素が含まれることで発色するものが多く、ベリル、コランダム、スピネル、トルマリンなどがこれに該当します。
他色の宝石の色起源となる微量元素は原子番号22~29の元素が主で、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)などの種類があります。
宝石の種類が異なる場合は、同じ微量元素であっても、異なる色に発色することもあります。
例えば、ベリルにクロムが取り込まれた場合は緑色に発色するエメラルドになりますが、コランダムにクロムが取り込まれた場合は赤色に発色するルビーになります。
このほかに、他色の宝石では自然界の放射性物質や放射線により発色するものもあります。
ジルコンは主成分であるジルコニウムの代わりに、ウランやトリウムなどの放射性元素を微量に含みます。
放射性元素により原子配列に格子欠陥が生じることで光の吸収が起こり発色しています。
ジルコンの結晶は生成されたばかりの時は淡色ですが、億年単位の長い年月の間に徐々に濃色へと変化します。
濃色に変化したジルコンに加熱処理を施すと、原子配列が元に近い状態に戻り、元の淡色に戻ります。
アクアマリンの属するベリル属について
不純物が非常に少ない純粋なベリルの結晶は無色透明で、結晶に鉄やマンガンなどの微量元素が取り込まれることで色を発色する他色鉱物(アロクロマティック・ミネラル)です。
微量元素の種類により発色する色は様々で、それぞれ別の異なる宝石として流通します。
ベリル(緑柱石)の一覧 | ||
宝石名 | 色 | 微量元素 |
エメラルド | エメラルドグリーンービリジアン | クロム、バナジウム |
アクアマリン | アクアブルー-ブルー-ブルーグリーン | 鉄 |
ブルーベリル(マシーシェ) | ブルー | 放射線照射 |
モルガナイト(ピンクベリル) | ピンク-ピーチ-ローズ | マンガン |
ビクスバイト(レッドベリル) | レッド-フクシア-ラズベリー | マンガン |
イエローベリル | イエロー-ライトイエロー | 鉄 |
ゴールデンベリル | ゴールデンイエロー-オレンジ | 鉄 |
ヘリオドール | イエローグリーン | 鉄、酸化ウラン |
ゴシェナイト(ゴシュナイト) | カラーレス(無色) | アルミニウム |
◆エメラルド
クロム・バナジウム・鉄の組み合わせによりエメラルドグリーン~ビリジアンを呈するベリル。発色に起因する金属イオンの種類によらず、緑色の濃さと彩度がエメラルドと呼ぶに十分であればエメラルドに分類されます。
◆グリーンベリル
クロム・バナジウム・鉄の組み合わせによりペールグリーンを呈するベリル。エメラルドと分類するには緑色の発色が淡すぎる場合はグリーンベリルに分類されますが、どの程度を「淡すぎる」と考えるのかについては見解に相違があります。
◆アクアマリン
鉄に起因してアクアブルー~ブルー~ブルーグリーン を呈するベリル。特に色の濃いものはサンタマリアと呼ばれています。
◆ブルーベリル(マシーシェベリル、マシーシャベリル、マシシベリル)
自然界での放射線照射によってカラーセンターが生じてサファイアの様な青色やタンザナイトの様な紫紺色を呈するベリル。ブラジルのミナス・ジェライス州のピアウイ渓谷にあるMaxixe鉱山から採石されたことから名付けられたベリルです。
◆モルガナイト(ピンクベリル)
マンガンに起因してペールピンク~ピンク~ピーチ~ローズピンクを呈するベリル。アクアマリンよりも希少な宝石ですが、アクアマリンやエメラルドのように一般消費者に幅広く宣伝販売されておらず、認知度・知名度が低いため比較的サイズの大きなルースでも手頃な価格で入手しやすい傾向にあります。
◆ビクスバイト(レッドベリル)
マンガンが起因して赤色~赤紫色~濃赤色を呈するベリル。
◆ゴールデンベリル
鉄に起因してゴールデンイエロー~オレンジを呈するベリル。
◆ヘリオドール
鉄や酸化ウランに起因してイエローグリーンを呈するベリル。
◆ゴッシュナイト(ゴッシェナイト、ゴシェナイト、ホワイトベリル、カラーレスベリル)
不純物の少ない無色透明の純粋なベリル。宝石として研磨されるサイズの結晶で、包有物(インクルージョン)の少ない無色透明の原石は稀にしか発見されないため希少ですが、ダイヤモンド以外の宝石ではカラーレスの需要は高くはないため、比較的安価に流通しています。
アクアマリンとブルーベリルの違いについて
アクアマリンと同じく青色を呈する緑柱石に、マシーシェベリル(Maxixe beryl)とも呼ばれるブルーベリルがあります。
1917年にブラジルのミナス・
アクアマリンが鉄に起因してアクアブルー系の青色を呈するのに対して、マシーシェベリルの青色は自然界での放射線照射によってカラーセンターが生じたもので、スリランカ産のブルーサファイアのような青色~タンザナイトの様な紫紺色を呈します。
1970年代にはイエローベリルやヘリオドールに照射(ガンマ線、X線、中性子線)と加熱処理を施すことで、マシーシェベリルと同様の色に変化させたブルーベリルが流通するようになりました。
人工的に照射されたものは「マシーシェ型ベリル」や「マシーシェタイプ・ベリル」などと呼ばれます。
マシーシェベリルもマシーシェ型ベリルも色が極めて不安定で、太陽光や100℃以上の高温に晒されると急速に退色してしまい、無色・黄色・褐色などに変色してしまうと宝石としての価値が下がってしまうため、今後も宝石としての流通は難しいといわれています。
サンタマリア・アクアマリンについて
アクアマリンの中で最も価値が高く評価されているのが、ブラジルのミナス・ジェライス州のサンタマリア・デ・イタビラ鉱山で採掘される彩度の高い青色を呈する”サンタマリア・アクアマリン(santa maria aquamarine)”です。
しかし、現在ではサンタマリア・デ・イタビラ鉱山はほとんど採掘されていないため、サンタマリアの名称は原産地を意味するものではなく、かつてサンタマリア・デ・イタビラ鉱山で採掘されていたものに近い色をしたアクアマリンの代名詞となっています。
1991年から採掘が始まったアフリカのモザンビーク共和国の鉱山でも、サンタマリアと同様の青みの濃いアクアマリンが発見され”サンタマリア・アフリカーナ”の名で流通しています。
また、近年ではマダガスカルでもサンタマリアの様に高品質なアクアマリンが発見・採掘され”ダブルブルー”の名称でも流通しています。
なお、サンタマリア・アクアマリンとして流通するものであっても、サンタマリア・デ・イタビラ鉱山で採掘される全ての結晶が良質という訳ではなく、当然ながら様々なグレードのものがあります。
サンタマリアとされる結晶も、大きなサイズ(5カラット以上)に研磨されたものは厚みもあるため濃く強い色を出すことができますが、小さなサイズ(5カラット以下)に研磨されて厚みが薄くなってしまうと濃く強い色がでないため、サンタマリア特有の濃い水色のルースを手に入れたい場合には、大きなサイズのルースを選ばれることをおすすめいたします。
アクアマリンの石言葉・宝石言葉
アクアマリンの石言葉・宝石言葉は、聡明-勇敢-沈着。
石言葉・宝石言葉とは、一つ一つの宝石に与えられた言葉のことで、各々の宝石の持つ特質や歴史・言い伝えなどから、象徴的な意味をもつ言葉が選ばれています。
石言葉・宝石言葉には、各々の宝石の持つ特質や色が与える心身への影響が研究された心理学が応用されていますので、自身が受ける心理的影響を生かしたセルフマネジメントや、他人に与える心理的影響を活かした印象戦略などに活用することができます。
アクアマリンと神話
アクアマリンはギリシア神話において海のゼウスと呼ばれる、海と地震を司る神のポセイドン(ローマ神話におけるネプチューン)に捧げられた宝石とされ、海の怪物のセイレーンから身を守る神聖な宝石とされています。
ギリシア神話に登場する海の怪物のセイレーンとは、上半身が人間の女性で下半身は鳥の姿とされ、後世には下半身は魚の姿と変化していることから現在に伝わる人魚のことと考えられえており、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を魅惑して、遭難や難破に遭わせる”あやかし”とされています。
アクアマリンを身に着けることで、セイレーンの誘惑に動じずに冷静沈着に物事を判断する精神状態を保つことができると伝えられていました。
このことから、アクアマリンは大海原に旅立つ勇気ある船乗り達の宝石として、航海の安全を祈願するお守りとされてきました。
アクアマリンの言い伝え
古代の文化において、アクアマリンは生命の源である海のエネルギーを持つとされ、不老不死の石とも呼ばれていました。
また、永遠の愛を象徴すると信じられていたアクアマリンは、新婚の夫婦の愛情を高めると伝えられるほか、長い間結婚生活を送っている夫婦の愛を再び呼び覚ますと伝えられています。
アクアマリンを身につけると頭の回転が速くなるとされ、明晰さを高めるとも信じられていました。
アクアマリンの歴史
古代ローマ時代では宝飾品のデザインは使用する宝石とその主題を一致させることが重要視されていました。
そのため、アクアマリンは海の神々を表現するために使われることが多かったようです。
皇帝ネロが闘技場での剣闘士の戦いを見るために制作されたとされる歴史上最初の眼鏡のレンズにはアクアマリンが使われていたと伝えられています。
ドイツ語で眼鏡を意味する”brille”は、アクアマリンの鉱物名”beryl”の語源となったラテン語”berillus”に由来するものです。
1065年のクリスマスにウェセックス朝のイングランド王のエドワード懺悔王が用いたとされる”聖エドワード王冠(St. Edward’s Crown)”は、英国王室正式の戴冠用王冠で、長い年月の間に失われたり破壊されたりしたため、現在使用されているものは1661年にチャールズ2世の戴冠式のために再制作されたものですが、最も古いイギリス王室祭具の一つとされています。
現在のセント・エドワードの王冠には、金・銀・プラチナの貴金属のほか、444個の宝石(アクアマリン、アメジスト、ガーネット、サファイア、ジルコン、スピネル、トパーズ、トルマリン、ペリドット、ルビー)があしらわれています。
1800年頃に制作されたとされる492カラットもの巨大なアクアマリンの置物がオーストリアのホーフブルク宮殿の一角にある王宮宝物館に展示されています。
1900年頃に制作されたとされるスウェーデン国王グスタフ6世アドルフの最初の妻マーガレット・オブ・コンノートが所有していたティアラは、アクアマリンをメインストーンにダイヤモンドをアクセントにしたヘッドピースで、ロシア女性の伝統的なヘッドピースの”ココシュニック(ココシニク)”に形が類似していることから”アクアマリン・ココシュニック・ティアラ”と呼ばれています。
旧約聖書のアクアマリン
誕生石の起源とされる旧約聖書の出エジプト記には、祭司が聖所で神に仕えるための式服”アロンの聖なる装束”として、一列に三石ずつ、四列に並べた計十二種類の宝石がそれぞれ金の枠にはめ込まれた”裁きの胸当て”についてが書かれています。
旧約聖書がヘブライ語で書かれていることや、当時は鉱物の種類は化学成分ではなく色相や外観で分別されていたため、実際にどの宝石が使われていたのかの解釈には諸説がありますが、ヘブライ語で”タルシシュ(tarshish)”と書かれた宝石はアクアマリンだったと考えられています。
タルシシュ(tarshish)の名は地名に由来しており、地中海沿岸に位置するトルコの都市”タルスス(tarsus)”とする説と、現在のスペイン南部アンダルシア地方に存在したとされる古代王国”タルテッソス(Tartessus)”とする説があり、いずれかの地から運ばれてきた宝石と推測されています。
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