ガーネットという宝石名は、鉱物学的には化学組成の近い等軸晶系の珪酸塩鉱物の総称で、アルミニウムを内包するパイラルスパイトのグループと、カルシウムを内包するウグランダイトの二系統のグループに大別されます。
さらに厳密に区分すると、パイラルスパイトのグループに属するガーネットにはアルマンダイト、パイロープ、スペサルタイト、ロードライト、ウンバライトなどが、ウグランダイトのグループに属するガーネットにはグロシュラライト、アンドラダイト、ウバロバイト、グランダイトなどがあり、現在までに知られているガーネットは15種類(諸説では20種類)のグループに区別されるといわれています。
—–パイラルスパイトのグループ—–
パイラルスパイト(Pyralspite)の名はパイロープ(Pyrope)、アルマンダイト(Almandite)、スペサルタイト(Spessartite)の名前を組み合わせたものです。アルミニウムガーネットとも呼ばれます。
◆パイロープ(Pyrope)
和名:苦礬柘榴石(くばんざくろいし)、紅柘榴石(べにざくろいし)
ギリシャ語で火を意味するプローポス(Pyropos)を語源とするパイロープは、鉄やクロムに起因した深く濃い赤色を呈するガーネットです。16~19世紀末までチェコのボヘミア地方が主要産地だったため、ボヘミアン・ガーネットとも呼ばれています。パイロープとアルマンダイトとは色相が似ているため成分を分析しなければ区別することは難しいと言われています。
◆アルマンダイト(Almandite)、アルマンディン(Almandine)
和名:鉄礬柘榴石(てつばんざくろいし)
産出量が最も多いことから日本の市場に流通するガーネットのほとんどを占めているのがアルマンダイトガーネットです。アルマンダイトの名は古くからこの宝石を研磨しているトルコの都市アラバンダ(Alabanda)に因んだものです。良質で大粒のものも多く産出しているので、テリがあり透明度の高い大粒のルースを選んでみるのもおすすめです。
◆スペサルタイト(Spessartite)、スペサルティン(Spessartine)
和名:満礬柘榴石(まんばんんざくろいし)
スペサルタイト・ガーネットは日本国内で人気が高まってきているガーネットです。スペサルタイトの名はかつての主要産地だったドイツのババリア地方の町スぺッサルト(Spessart)に因んだものです。純粋なものは淡黄色ですが、採掘した産地の地質によってヘソナイトにも似たオレンジ色や、ロードライトガーネットにも近い紫色を帯びた赤色など、色相の幅が広いのが特徴です。鮮やかなオレンジ色を呈するものはマンダリンガーネットと呼んで区別する場合もあります。
◆ロードライト(Rhodolite)
ロードライトはアルマンダイトとパイロープが混ざり合った固溶体のガーネットで、紫を帯びたローズレッド色を呈します。ギリシャ語でバラの石という意味でロード(rhod=バラ)+リトス(lithos =石)→ロードライト(rhodorite)と命名されました。1882年にアメリカのノースカロライナ州で発見された比較的新しい種類のガーネットで、見る角度や明るさなどによって色味が変化するのを楽しむことができます。産出量が安定していることもあり、比較的安価に流通していることから人気が高まってきているガーネットです。
◆ウンバライト(Umbalite)
ウンバライトはパイロープとスペサルタイトが混ざり合った固溶体のガーネットで、シャンパン色、ピンク色、ブラウン色を呈するガーネットです。ウンバライトが発見されたタンザニアとケニアの国境付近のウンバ川流域の名に因んでウンバライトと名付けられました。1970年代初頭の頃からウンバライトはロードライトの鉱床で時折発見されるようになりましたが、商品としては価値がない石として扱われていたため、スワヒリ語で役立たずを意味するマラヤ(マライヤ)と呼ばれていました。しかし、これがロードライトとは異なる希少なガーネットであることが分かり、マラヤガーネットの名で積極的に販売されるようになりました。
—–ウグランダイトのグループ—–
ウグランダイト(Ugrandite)の名はウバロバイト(Uvarovite)、グロシュラライト(Grossularite)、アンドラダイト(Andradite)の名前を組み合わせたものです。カルシウムガーネットとも呼ばれています。
◆ウバロバイト(Uvarovite)
和名:灰クロム柘榴石(かいクロムざくろいし)
ウバロバイトはクロムに起因する鮮緑色を呈するガーネットです。ウバロバイトの名は1832年に発見された当時のロシアの文部大臣で熱心な鉱物コレクターであったウバロフ(Uvarov)氏の名に因んで命名されました。ウバロバイトはその類まれな色合いと輝きから美しいルースになりそうですが、大きな結晶が採掘されることがないためドゥルージー結晶として主に観賞用に流通しています。
◆グロシュラライト(Grossularite)
和名:灰礬柘榴石(かいばんざくろいし)
グロシュラライトの名の由来は黄緑色の卵形の漿果をつけるスグリ亜属の植物の学名Grossulariaに因んだものです。グロシュラライトに属するガーネットはグリーンガーネットやツァボライト・ガーネット(Tsavolite Garnet)と呼ばれる緑色を呈するガーネットのほか、ヘソナイト・ガーネット(Hessonite Garnet)と呼ばれるオレンジ色~赤褐色を呈するガーネットや、無色のものや黄色ものまで多彩な色を呈します。
◆アンドラダイト(Andradite)
和名:灰鉄柘榴石(かいてつざくろいし)
アンドラダイトに属するガーネットにはダイヤモンドよりも分散光が強く美しい緑色を呈するデマントイド・ガーネット(Demantoid Garnet)、黄色の色合いがトパーズに似ていることからその名が名付けられたトパゾライト・ガーネット(Topazolite Garnet)、黒色を呈するメラナイト・ガーネット(Melanite Garnet)などがあり、中でもデマントイドは産出量が非常に少なく、希少価値が非常に高いことから数あるガーネットの中で最も高値で取引されています。
◆グランダイト(Grandite)
グランダイトはグロシュラライトとアンドラダイトが混ざり合った固溶体で、淡緑色~緑色、淡黄色~橙色~褐色と多彩な色合いを呈するガーネットです。グランダイトは1994年にアフリカのマリ共和国のサハラ砂漠で発見された高い透明度と美しい色合いが注目されている新種のガーネットで、一般にはマリ・ガーネット(Mali Garnet)の呼び名が定着しています。成分のほとんどがグロシュラライトの成分だけのものもありますが、アンドラダイトの成分比の高い橙色~褐色のものはその高い屈折率による眩い煌きを放つため、シャンパンダイヤモンドやコニャックダイヤモンドの代替品として需要があります。黄緑色のものが最も産出量が多い中、稀に産出するエメラルドに優るとも劣らない緑色を呈するものは稀少価値の高いデマントイドや人気の高いツァボライトの代替品として珍重されています。
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