宝石名 | アクアマリン(アクワマリン) |
英名 | Aquamarine |
和名 | 水宝玉(すいほうぎょく)・藍玉(あいだま) |
鉱物名 | 緑柱石(りょくちゅうせき)・ベリル(beryl) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
化学組成 | ベリリウムとアルミニウムの珪酸塩 |
化学式 | Be3Al2Si6O18 |
結晶系 | 六方晶系 |
モース硬度 | 7.5-8 |
靭性 | 7.5 |
劈開性 | 一方向に微弱 |
比重 | 2.6-2.9 |
屈折率 | 1.57-1.59 |
分散度 | 0.014 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | アクアブルー – ブルーグリーン |
誕生石 | 3月 |
石言葉・宝石言葉 | 聡明-勇敢-沈着 |
アクアマリンとは?
アクアマリンとは、宝石質の緑柱石(ベリル)のうち、青色系の色調の結晶の宝石名。
和名は”水宝玉(すいほうぎょく)”または”藍玉(あいだま、らんぎょく)”。
アクアマリンの色には、淡い水色から濃い水色、緑青、緑青まで様々なものがあります。
アクアマリンは3月の誕生石で、澄んだ海水を思い起こさせる美しい色合いから、現代の日本では女性に人気の宝石ですが、中世ヨーロッパでは航海の安全を祈るお守りとして船乗りの男達が肌身離さず身に着けていた宝石です。
アクアマリンの意味
宝石名のアクアマリン(aquamarine)とは”海水”の意味で、ラテン語で”水”を意味する”アクア(aqua)”と”海”を意味する”マリン(marin)”に由来します。
アクアマリンの歴史
アクアマリンは少なくとも3000年以上前から宝飾品に使用されてきた歴史があり、ローマ、ギリシャ、エジプト、シュメールなどの古い文献においては”シーグリーンベリル(Sea Green Beryl)”などと呼ばれていました。
アクアマリンの宝石名はローマ人によって初めて使われるようになったと言われており、1609年に出版された鉱物学者のアンセルムス・デ・ブート(Anselmus de Boodt)の著書”宝石と宝石史(Gemmarum et Lapidum Historia)”がアクアマリンの名が書かれた最古の文献とされています。
アクアマリンの言い伝え・効果
古代の文化において、アクアマリンは生命の源である海のエネルギーを持つと言い伝えられ、不老不死の石と呼ばれていました。
また、永遠の愛を象徴すると信じられていたアクアマリンは、新婚の夫婦の愛情を高める効果があると言い伝えられるほか、長い間結婚生活を送っている夫婦の愛を再び呼び覚ますと言い伝えられています。
アクアマリンを身につけると頭の回転が速くなるとされ、明晰さを高める効果があるとも信じられていました。
旧約聖書のアクアマリン
誕生石の起源とされる旧約聖書の出エジプト記には、祭司が聖所で神に仕えるための式服”アロンの聖なる装束”として、一列に三石ずつ、四列に並べた計十二種類の宝石がそれぞれ金の枠にはめ込まれた”裁きの胸当て”についてが書かれています。
旧約聖書がヘブライ語で書かれていることや、当時は鉱物の種類は化学成分ではなく色相や外観で分別されていたため、実際にどの宝石が使われていたのかの解釈には諸説がありますが、ヘブライ語で”タルシシュ(tarshish)”と書かれた宝石はアクアマリンだったと考えられています。
タルシシュ(tarshish)の名は地名に由来しており、地中海沿岸に位置するトルコの都市”タルスス(tarsus)”とする説と、現在のスペイン南部アンダルシア地方に存在したとされる古代王国”タルテッソス(Tartessus)”とする説があり、いずれかの地から運ばれてきた宝石と推測されています。
アクアマリンの産地
アクアマリンの世界最大の鉱床はブラジルのミナス・ジェライス鉱山です。
その他、世界中で発見されており、パキスタン、ケニア、ザンビア、ナイジェリア、マダガスカル、モザンビーク、中国、ミャンマー、ロシア、ウクライナ、アメリカなどでも採掘されています。
アクアマリンの特性
アクアマリンは鉱物学的にはエメラルドと同じベリル(beryl)=緑柱石(りょくちゅうせき)に属する鉱物で、化学組成はベリリウムとアルミニウムの珪酸塩、化学式は”Be3Al2Si6O18″で表されます。
宝石質の緑柱石(ベリル)のうち、微量元素として含有する鉄に起因して青色系の色調を呈するものがアクアマリンに分類されます。
アクアマリンの青色は結晶の内包する鉄の入りこみ方や、含有量の差によって色調や色の濃淡に違いが出てくるため、色は薄水色~水色~濃水色のものまで意外と思えるほど幅広くあります。
市場に流通している一部のアクアマリンにはグレーがかっていたり淡いグリーン色のものを加熱して青色を引き出したものもありますが、これは結晶が元々内包していた鉄を反応させているだけで、加熱処理により色の濃淡を変化させることはできません。
アクアマリンの価値
アクアマリンの宝石としての価値は、色の濃度が高く、色調は濃い青色や僅かに緑がかった青色で、且つ透明度の高いものが高く評価されます。
また、色の均一性も重要な要素で、全体の色に一貫性があり、カラーゾーニング(色分布)が見られないことが望ましいとされています。
市場に流通しているアクアマリンのほとんどは、加熱処理によって青色が引き出されていますが、非加熱・未処理のアクアマリンはより価値が高いとされています。
アクアマリンの種類
◆サンタマリア・アクアマリン(santa maria aquamarine)
アクアマリンの中で最も価値が高く評価されているのが、ブラジルのミナス・ジェライス州のサンタマリア・デ・イタビラ鉱山で採掘される彩度の高い青色を呈する”サンタマリア・アクアマリン(santa maria aquamarine)”です。
しかし、現在ではサンタマリア・デ・イタビラ鉱山はほとんど採掘されていないため、サンタマリアの名称は原産地を意味するものではなく、かつてサンタマリア・デ・イタビラ鉱山で採掘されていたものに近い色をしたアクアマリンの代名詞となっています。
1991年から採掘が始まったアフリカのモザンビーク共和国の鉱山でも、サンタマリアと同様の青みの濃いアクアマリンが発見され”サンタマリア・アフリカーナ”の名で流通しています。
また、近年ではマダガスカルでもサンタマリアの様に高品質なアクアマリンが発見・採掘され”ダブルブルー”の名称でも流通しています。
なお、サンタマリア・アクアマリンとして流通するものであっても、サンタマリア・デ・イタビラ鉱山で採掘される全ての結晶が良質という訳ではなく、当然ながら様々なグレードのものがあります。
サンタマリアとされる結晶も、大きなサイズ(5カラット以上)に研磨されたものは厚みもあるため濃く強い色を出すことができますが、小さなサイズ(5カラット以下)に研磨されて厚みが薄くなってしまうと濃く強い色がでないため、サンタマリア特有の濃い水色のルースを手に入れたい場合には、大きなサイズのルースを選ばれることをおすすめいたします。
◆モスアクアマリン(moss aquamarine)
苔(moss)のように見えるインクルージョンを内包するものは”モス・アクアマリン(moss aquamarine)”と呼ばれています。
モスアクアマリンは通常のアクアマリンと比べてややグリーンがかった深みのある色調のものが多く、他の鉱物からなる極小のインクルージョン(内包物)を点状や針状(ルチル状)に含有しているのが特徴です。
モスアクアマリンはインクルージョン(内包物)の少ないアクアマリンと比較して宝石としての価値は劣るとされていますが、近年では自然な見た目の天然石の需要も高まってきているため、かなり人気が出てきていますが、流通量は少ないです。
◆ミルキーアクアマリン(milky aquamarine)
半透明~不透明で乳白色がかった色調のものは”ミルキーアクアマリン(milky aquamarine)”の名で流通していることもあります。
ミルキーアクアマリンは透明度の高いアクアマリンよりも耐久性が低いことから、ファセットカットが施されることは稀で、通常はカボションカットやラウンドビーズ(丸玉)に成形されます。
ベリル(緑柱石)の宝石について
アクアマリンの属する鉱物のベリル(beryl)=緑柱石(りょくちゅうせき)は、化学組成はベリリウムとアルミニウムの珪酸塩、化学式はBe3Al2Si6O18で表されます。
緑柱石(ベリル)はモース硬度7.5~8と比較的硬く、靭性も高いため、ジュエリー用として耐久性のある宝石に分類されます。
不純物が非常に少ない純粋な緑柱石(ベリル)の結晶は無色透明で、結晶に鉄やマンガンなどの微量元素が取り込まれることで色を発色する他色鉱物(アロクロマティック・ミネラル)です。
そのため、下記の様に呈する色の違いによって異なる宝石名で流通しています。
緑柱石(ベリル)の宝石の一覧 | ||
宝石名 | 色 | 発色元素 |
エメラルド | エメラルドグリーンービリジアン | クロム、バナジウム |
アクアマリン | アクアブルー-ブルー-ブルーグリーン | 鉄 |
ブルーベリル(マシーシェ) | ブルー | 放射線照射 |
モルガナイト(ピンクベリル) | ピンク-ピーチ-ローズ | マンガン |
ビクスバイト(レッドベリル) | レッド-フクシア-ラズベリー | マンガン |
イエローベリル | イエロー-ライトイエロー | 鉄 |
ゴールデンベリル | ゴールデンイエロー-オレンジ | 鉄 |
ヘリオドール | イエローグリーン | 鉄、酸化ウラン |
ゴッシェナイト(ゴシェナイト) | カラーレス(無色) | アルミニウム |
◆エメラルド
クロム・バナジウム・鉄の組み合わせによりエメラルドグリーン~ビリジアンを呈するベリル。発色に起因する金属イオンの種類によらず、緑色の濃さと彩度がエメラルドと呼ぶに十分であればエメラルドに分類されます。
↓こちらの別ページにてエメラルドについて詳細をご案内しております。
5月の誕生石 エメラルドの意味と宝石言葉
◆グリーンベリル
クロム・バナジウム・鉄の組み合わせによりペールグリーンを呈するベリル。
エメラルドと分類するには緑色の発色が淡すぎる場合はグリーンベリルに分類されますが、どの程度を「淡すぎる」と考えるのかについては見解に相違があります。
◆アクアマリン
鉄に起因してアクアブルー~ブルー~ブルーグリーン を呈するベリル。
特に色の濃いものはサンタマリアと呼ばれています。
↓こちらの別ページにてアクアマリンについて詳細をご案内しております。
3月の誕生石 アクアマリンの意味と宝石言葉
◆ブルーベリル(マシーシェベリル、マシーシャベリル、マシシベリル)
自然界での放射線照射によってカラーセンターが生じてサファイアの様な青色やタンザナイトの様な紫紺色を呈するベリル。
ブラジルのミナス・ジェライス州のピアウイ渓谷にあるMaxixe鉱山から採石されたことから名付けられたベリルです。
◆モルガナイト(ピンクベリル)
マンガンに起因してペールピンク~ピンク~ピーチ~ローズピンクを呈するベリル。
モルガナイトはアクアマリンよりも希少な宝石ですが、アクアマリンやエメラルドのように一般消費者に幅広く宣伝販売されておらず、認知度・知名度が低いため比較的サイズの大きなルースでも手頃な価格で入手しやすい傾向にあります。
↓こちらの別ページにてモルガナイトについて詳細をご案内しております。
4月の誕生石 モルガナイトの意味と宝石言葉
◆ビクスバイト(レッドベリル)
マンガンが起因して赤色~赤紫色~濃赤色を呈するベリル。
◆ゴールデンベリル
鉄に起因してゴールデンイエロー~オレンジを呈するベリル。
◆ヘリオドール
鉄や酸化ウランに起因してイエローグリーンを呈するベリル。
◆ゴッシェナイト(ゴッシュナイト、ゴシェナイト、ホワイトベリル、カラーレスベリル)
不純物の少ない無色透明の純粋なベリル。
ベリルの殆どは他色が混じっていることが多く、無色透明のベリルの結晶は稀にしか発見されないため希少ですが、ダイヤモンド以外の宝石ではカラーレスの需要は高くはないため、比較的安価に流通しています。
ゴッシェナイト(goshenite)の宝石名の語源は、最初に発見されたアメリカ合衆国北東部、ニューイングランド地方に位置するニューハンプシャー州サリバン郡の町名”ゴーシェン(goshen)”と、”鉱物・化石”を意味する接尾辞の”-lite”に由来します。
※接尾辞の”-ite”や”-lite”は、”石”の意味を持つギリシャ語”lithos”が語源。
アクアマリンとブルーベリルの違いについて
アクアマリンと同じく青色を呈する緑柱石に、マシーシェベリル(Maxixe beryl)とも呼ばれるブルーベリルがあります。
1917年にブラジルのミナス・
アクアマリンが鉄に起因してアクアブルー系の青色を呈するのに対して、マシーシェベリルの青色は自然界での放射線照射によってカラーセンターが生じたもので、スリランカ産のブルーサファイアのような青色~タンザナイトの様な紫紺色を呈します。
1970年代にはイエローベリルやヘリオドールに照射(ガンマ線、X線、中性子線)と加熱処理を施すことで、マシーシェベリルと同様の色に変化させたブルーベリルが流通するようになりました。
人工的に照射されたものは「マシーシェ型ベリル」や「マシーシェタイプ・ベリル」などと呼ばれます。
マシーシェベリルもマシーシェ型ベリルも色が極めて不安定で、太陽光や100℃以上の高温に晒されると急速に退色してしまい、無色・黄色・褐色などに変色してしまうと宝石としての価値が下がってしまうため、今後も宝石としての流通は難しいといわれています。
ベリルとクリソベリルの違いについて
ベリル(beryl)と似た名前を持つ鉱物にクリソベリル(chrysoberyl)があります。
前述のとおりベリル(beryl)は和名で緑柱石(りょくちゅうせき)と呼ばれる鉱物で、化学組成はベリリウムとアルミニウムの珪酸塩鉱物、化学式 Be3Al2Si6O18、結晶系は六方晶系、モース硬度は7.5-8、宝石としてはエメラルド、アクアマリン、モルガナイト、ヘリオドール、ゴッシュナイトなどが属しています。
一方のクリソベリル(chrysoberyl)は和名で金緑石(きんりょくせき)と呼ばれる鉱物で、化学組成はベリリウムとアルミニウムの酸化鉱物、化学式 Al2BeO4 または BeAl2O4、結晶系は直方晶系(斜方晶系)、モース硬度は8.5、宝石としてはクリソベリルやキャッツアイ・クリソベリル、アレキサンドライトなどが属しています。
ベリルとクリソベリルは名前はよく似ていますが全く別の鉱物です。
双方ともにベリリウムとアルミニウムが主要な化学組成ですが、ベリルは珪酸塩鉱物、クリソベリルは酸化鉱物です。
どちらも名前にベリルが使われている理由は、化学組成にベリリウム(beryllium)と呼ばれる金属元素を主成分に含んでいることにあります。
ことわざの卵が先か鶏が先かではないですが、金属元素のベリリウムの名の語源はベリルから発見されたことに由来しています。
クリソベリル(chrysoberyl)の”クリソ(chryso)”の語源は”黄金”を意味するギリシャ語の”クリソス(khrusos)”に由来するものです。
ちなみに、クリソ(chryso)が名に使われている宝石はクリソベリル(chrysoberyl)のほかに、クリソプレーズ(chrysoprase)、ペリドットの別名のクリソライト(chrysolite)、クリソコラ(chrysocolla)などがありますが、これらの宝石もそれぞれ全く別の鉱物になります。
アクアマリンとアクワマリンは同じ宝石?
2021年10月8日、宝石鑑別団体協議会(AGL)と日本ジュエリー協会(JJA)が「宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法」の内容変更のお知らせを発表しました。
宝石の鑑別書に記載されるカタカナ表記の名称を、2021年11月より一般に使われることが多い名称に統一して変更するというものです。
外国語のスペルや発音を仮名で表すのは難しく、”aquamarine”のカタカナ表記には”アクアマリン”と”アクワマリン”が混用されていて、どちらも間違いではありません。
以前は”aquamarine”は鑑別書に”アクワマリン”と記載されていたのですが、今後は宝石の鑑別書に記載されるカタカナ表記の名称は、より一般的と思われる表記の”アクアマリン”に変更されることになりました。
アクアマリンのお手入れについて
アクアマリンはモース硬度7.5~8の丈夫な半貴石で、傷がつきにくいのが特徴です。
しかし、アルコール、アンモニア、その他の酸などの化学薬品に弱いため、ご家庭でのお手入れの際には宝石専用のクリーナーをご使用されることをおすすめいたします。
アクアマリンは直射日光に弱く、長い間紫外線や熱に曝露すると褪色してしまう性質があり、褪色してしまうと元に戻すことはできませんので、色褪せを防止するためにも光を透過しない箱等に入れて収納するなど暗所で保管するよう注意が必要です。
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