天然石

誕生石発祥の起源・歴史~ルーツを辿る

誕生石発祥の起源・誕生石のルーツ

誕生石の起原には諸説あり、そのルーツは定かではありません。

その中でも、誕生石の起源として最も有力な説として考えられているのが、約3500年前の旧約聖書における12種類の宝石の記述です。

旧約聖書の二番目の書の”出エジプト記”の第28章には、ユダヤの祭司が身に着ける聖なる装束の詳細が記されており、”裁きの胸当て”または”祭司の胸当て”には12種類の宝石を飾らなければならない、という旨の記述があり、これが誕生石のルーツになったと考えられています。

この他には、新約聖書の”ヨハネ黙示録”に著されている”宝石のように輝く聖なる都エルサレムは高い城壁をめぐらし、東西南北に12の門を構え、その門の土台には12個の宝石が彩られていた”という旨の記述が誕生石のルーツという説もあります。

誕生石の歴史

旧約聖書の出エジプト記が書かれた約500年後の1世紀頃になると、12種類の宝石と1年の12ヶ月、そして12星座の間には何らかの関連性があると考えられるようになります。

5世紀頃には12種類の宝石を使うことがキリスト教徒に奨励されるようになっていき、12種類の宝石を飾ったベルトやブレスレットなどの装飾品を身に着ける習慣が確立されていきます。

この風習は発展し、8世紀~9世紀頃には、12種類の宝石をすべての宝石を集めても一種類の宝石のみを身に着けて、ひと月毎に宝石を変えていくスタイルへと変化していったと言われています。

西洋の東洋との交易が盛んになった時代には、インド発祥の占星術を利用した風習も伝わり、出生日時と出生地点などの出生データから、”ホロスコープ”や”出生図”と呼ばれる”出生日時の天体の配置図”を割り出し、導き出された守護惑星と呼応する宝石を護符として身につける習慣も伝わっていったと考えられています。

“自分の生まれた誕生月と同じ月を象徴する宝石を身に着けると神のご加護がある”という、現代に伝わる誕生石の風習の発祥は、16世紀から18世紀にかけてポーランドまたはドイツに移住したユダヤ人によるものといわれ、商売に長けるユダヤ人は貿易のために他国へと渡り世界へと広がっていきました

世界の誕生石の歴史

アメリカの伝統的な誕生石にはユダヤ人より伝えられたものが用いられていましたが、その後、複数の宝石商の団体により個々に宝石が加えられたため、誕生石にリストされる宝石の種類はバラバラでした。

1912年にアメリカの宝石商組合(現在のジュエラーズ・オブ・アメリカ)によって正式に統一された誕生石のリストが広められました。

ユダヤ人から伝えられた伝統的なリストをもとに、流通量や実用性を加味しながら、誕生石を整理したのは歴史に名を遺す非凡な鉱物学者・宝石鑑定士(ジェモロジスト)である”ジョージ・フレデリック・クンツ博士(George Frederick Kunz)”であるとされています。

その後、1952年にはアメリカ宝石小売商組合など複数の団体によって、6月にアレキサンドライト、11月にシトリン、10月にピンクトルマリン、12月にジルコンが追加され、2002年には12月にタンザナイトが追加され、2016年には8月にスピネルが追加されています。

誕生石の習慣はアメリカ以外にもイギリス、フランス、日本など世界各国に広まっていますが、それぞれの国の国情や時代に合わせて誕生石のリストは変化しているため、国や地域によって若干異なっていますが、アメリカとイギリスの二国の選定が基準となっています。

↓↓↓誕生石についての詳細は以下のページをご参照ください。

誕生石とは?誕生石一覧と石言葉の意味

日本の誕生石の歴史

日本の誕生石は1958年に全国宝石卸商協同組合によって選定されたものです。

日本の誕生石は日本独自に考案されたもので、伝統的なアメリカの誕生石を基準に、日本の国石となっている”ヒスイ(翡翠)”と、日本国内で人気の高かった宝石の”コーラル(珊瑚)”が追加されたものでした。

ちなみに、国石とはその国家を代表・象徴する宝石のことで、 多くの国が自国で産出する宝石を国石としています。

日本の国石は日本鉱物科学会によって選定されたもので、新潟県の糸魚川で産出する宝石のヒスイ(翡翠)が選ばれています。

2021年12月20日に日本の誕生石が改定されることになり、アイオライト、アレキサンドライト、クリソベリル・キャッツアイ、クンツァイト、ジルコン、スピネル、スフェーン、タンザナイト、ブラッドストーン、モルガナイト、の10種類の宝石が新しい誕生石として追加されました。

↓↓↓改定された日本の新しい誕生石についての詳細は以下のページをご参照ください。

新しい誕生石一覧 2021年改訂・最新版

旧約聖書の”出エジプト記”に著されている宝石

  ヘブライ語   第一候補 第二候補
第一列 odem オデム ルビー カーネリアン
  pitdah ビットゥダー ペリドット トパーズ
  bareqet ヴァレケット エメラルド  
第二列 nophek ノフェク ガーネット  
  sappir サピール サファイア ラピスラズリ
  yahalom ヤハロム ジェイド ジャスパー
第三列 leshem レシェム オパール ジルコン
  shebo シェヴォー アゲート サードオニキス
  ahlamah アフラマー アメジスト  
第四列 tarshish タルシシュ アクアマリン ベリル
  shoham ショハム ラピスラズリ オニキス
  yashepheh ヤシュフェー ジャスパー  

祭司が聖所で神に仕えるための式服”アロンの聖なる装束”において、一列に三石ずつ、四列に並べた計十二種類の宝石がそれぞれ金の枠にはめ込まれた”裁きの胸当て”が作られます。

その十二種類の宝石には、イスラエルの十二部族の名を刻むように主はモーセに命じられ、一つの宝石につき一部族の名が刻まれます。

十二部族を表した十二種類の宝石で飾られた”裁きの胸当て”を身に着けることで、主がイスラエルの民のことを絶えず心掛けて執り成し祈るようにするためです。

旧約聖書がヘブライ語で書かれていることや、当時は鉱物の種類は化学成分ではなく色相や外観で分別されていたため、実際にどの宝石が使われていたのかを判断するのは難しいことから、宝石名の解釈には諸説があります。

新約聖書の”ヨハネ黙示録”に著されている宝石

第一の土台石 ジャスパー(壁玉)
第二の土台石 サファイア(碧玉)
第三の土台石 アゲート(瑪瑙)
第四の土台石 エメラルド(緑玉)
第五の土台石 サードオニキス(赤白縞瑪瑙)
第六の土台石 カーネリアン(紅玉髄)
第七の土台石 ペリドット(橄欖石)
第八の土台石 トパーズ(黄玉)
第九の土台石 ベリル(緑柱石)
第十の土台石 クリソプレーズ(緑玉髄)
第十一の土台石 ジルコン(風信子石)
第十二の土台石 アメシスト(紫水晶)

インドに伝わる9つの宝石の護符”ナヴァラトナ”

ヒンドゥー教には古来より伝わる、サンスクリット語で”9つの宝石”を意味する”ナヴァラトナ(Navaratna)”と呼ばれる護符があり、9つのそれぞれの宝石は宇宙の天体とその神々と神秘的な力が結び付いていると考えられています。

“ナヴァラトナ(Navaratna)”は、サンスクリット語で”9″を意味する”ナヴァ(nava)”と、”宝石”を意味する”ラトナ(ratna)”からなる”9つの宝石”を意味する複合語です。

ナヴァラトナの9つの宝石に秘められた意味の起源には、”ヴェーダ(Veda)”と呼ばれる紀元前より伝わるインドの聖典が扱う”ナヴァグラハ(Navagrahas)”と呼ばれる”9つの天体”と、それらを神格化した”9人の天の神”にまつわる神話的な概念が結びついています。

ヒンドゥー教では宝石はエネルギーの結晶で、宇宙の天体からの力を長い期間維持することができると考えられいます。

ナヴァラトナでは、太陽を象徴する宝石とされるルビー(またはレッドスピネルやガーネット)を中心として、9つの宝石の配置が決められており、9つの宝石を同時に身に着けることによって、太陽系の天体から届く良いエネルギーを増幅させたり、悪いエネルギーを緩和したりして、身に着けた人のエネルギーを高めると伝えられています。

ナヴァラトナはインド占星術とも強い結びつきがあり、出生日時の天体の配置図を表すホロスコープで守護惑星を割り出して、ナヴァラトナの9つの宝石より呼応する護符となる守護石が導き出されます。

↓↓↓ナヴァラトナについての詳細は以下のページをご参照ください。

ナヴァラトナと9つの宝石の意味

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