パ―ル(和名:真珠)は6月の誕生石です。
パールには、真珠層を持つ天然貝から採れる有機物質の宝石「本真珠」と、本真珠を模して真珠塗料を用いて作られる「イミテーションパール(人工真珠)」とがあります。
本真珠には、アコヤ貝・白蝶貝・黒蝶貝などの海水域に生息する貝から採れる「海水パール(海水真珠)」と、イケチョウ貝・ヒレイケチョウ貝をはじめとした河川や湖沼などの淡水域~汽水域に生息する貝から採れる「淡水パール(淡水真珠)」とがあり、本真珠には「天然真珠」と「養殖真珠」がありますが、本物の天然真珠は大変希少で市場に流通することは稀なため、一般に流通している本真珠のその殆どが養殖真珠になります。
養殖真珠はピースと呼ばれる真珠貝の外套膜組織の一片を切り取ったものを母貝の体組織の中に挿入する方法で作られます。
この方法は明治40年(1907年)に御木本幸吉氏の娘婿の西川藤吉氏によって特許出願されたピース式や西川式と呼ばれ、今日の真珠養殖の技術の基礎となっています。
海水パールの大半は、貝殻を真円に成形した種玉を外套膜組織に包んで母貝の体組織の中に挿入することで、種玉の周りに真珠層が形成されていくことで作られる有核真珠になり、核となる種玉が真円のため、形もサイズも揃うものが多いです。
その一方で、淡水パールは有核と無核のいずれも方法でも養殖されています。
戦前の淡水パールの養殖では有核真珠が主流でしたが、戦後になって淡水パールの養殖ではピース(真珠貝の外套膜組織の一片)のみを母貝に挿入する無核養殖の方が良質な真珠ができることが偶然わかり、有核養殖から無核養殖へと代わって行きました。
無核養殖された真珠は、真円のものはごく稀にしか採れず、そのほとんどが非真円のライス型やティアドロップ型などのさまざまな形状になり、一粒の大きさは無核真珠で3~6mmと小粒のもの比較的小粒のものが大半です。
1990年代に入ると中国でヒレイケチョウガイを母貝として有核養殖された真円の淡水パールも作られるようになってきました。
当初はサイズが5~7mmと小さめで、真珠層の巻きの厚さはあっても輝きが今一歩と評価されていましたが、その後に養殖技術の進歩で品質が向上し、養殖期間の延長(4年半~5年半以上)によってサイズアップするなど、様々な技術革新によって品質の高い有核の淡水パールが生産されるようになり、近年では6~8mmが主力サイズとなってきています。
中には養殖期間を7~8年に延長して作られた10mm以上の特大粒サイズの珠も出回るようになりました。
本真珠を模造したイミテーションパールには、養殖真珠の核に使われているのと同じ、貝殻(シェル)を削って成形加工した天然貝核を原珠に用いた「貝パール(シェルパール)」、形成したガラス玉を原珠に用いた「ガラスパール」、綿=コットンを丸め圧縮して作られた球体を原珠に用いた「コットンパール」、プラスチック樹脂を原珠を用いた「プラパール(樹脂パール)」などがあります。
日本製のイミテーションパールはかつて世界市場で高いシェアを誇り、世界中に輸出されていました。
日本の確かな技術と細やかな手仕事は世界的に高く評価されており、日本製のイミテーションパールは世界の宝飾業界において揺るぎない信頼と地位を築いています。
2021年12月20日に日本の誕生石が改訂されることになり、アレキサンドライトはパール(真珠)、ムーンストーンと共に6月の誕生石となりました。
日本の誕生石は1958年に全国宝石卸商協同組合によって制定されたもので、日本の誕生石が改訂されるのは実に63年振りのことでした。
アレキサンドライトは鉱物「クリソベリル(chrysoberyl )=金緑石(きんりょくせき)」の一種で、化学組成はベリリウムとアルミニウムの酸化鉱物で、化学式は Al2BeO4 または BeAl2O4 で、結晶系は直方晶系(斜方晶系)、モース硬度8.5の貴石・宝石です。
酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウムを微量に含有することに起因する光吸収特性によって変色効果(カラーチェンジ)を示すクリソベリルの変種で、和名では「変彩金緑石(へんさいきんりょくせき)」とも呼ばれています。
太陽光や蛍光灯の元では緑色から青緑色に、白熱灯の元では紫色または茶色がかった赤色に色変化することから、「昼はエメラルド、夜はルビー」とも形容される、非常に珍しい希少な宝石です。
1830年の春、当時12歳だったロマノフ朝第12代ロシア皇帝のアレクサンドル2世の成年式の日にアレキサンドライトがロシアのウラル山脈にあるタコワヤ川流域のエメラルド鉱山で発見され、アレクサンドル2世の名前に因んで「アレキサンドライト(Alexandrite)」と命名されました。
アレキサンドライトは供給量が極めて少ない希少な宝石であるが故、非常に人気の高い宝石で、世界で最も高価な宝石の1つに数えられます。
アレキサンドライトは結晶の多くにインクルージョンやクラックがみられるため、透明度の高い上質のものはごく稀で、サイズが大きく、変色効果(カラーチェンジ)の大きい、美しいカラーの高品質なルースは滅多に市場には出回りません。
天然アレキサンドライトでは非常に稀少とされる美しい色調と、はっきりとした変色効果、高い透明感(インクルージョンが少ない)、最高品質の天然アレキサンドライトを再現した、合成宝石のアレキサンドライトも流通しています。
化学特性・物理特性・光学特性・結晶構造が天然アレキサンドライトと殆ど同じ、人工石の合成アレキサンドライトです。
合成アレキサンドライトは天然アレキサンドライトと比べて安価なうえ、高品質なアレキサンドライトと同様の美しい色合いや、大きな変色効果を楽しむことができるため、その存在価値は高く、需要の高い合成宝石です。