宝石名 | エメラルド |
英名 | Emerald |
和名 | 翠玉(すいぎょく)・緑玉(りょくぎょく) |
鉱物名 | 緑柱石(りょくちゅうせき)/ベリル(Beryl) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
化学組成 | ベリリウムとアルミニウムの珪酸塩 |
化学式 | Be3Al2Si6O18 |
結晶系 | 六方晶系 |
モース硬度 | 7.5-8 |
靭性 | 普通-低 |
劈開性 | 一方向に微弱 |
比重 | 2.6-2.9 |
屈折率 | 1.57-1.59 |
分散度 | 0.014 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | エメラルドグリーン – ビリジアン |
誕生石 | 5月 |
石言葉・宝石言葉 | 幸運-幸福-安定-愛 |
結婚記念日の宝石 | エメラルド婚式 (結婚55周年) |
エメラルドとは?
エメラルド(emerald)は5月の誕生石。
世界四大宝石の一つとして知られる貴石の宝石です。
鉱物学的にはエメラルドは緑色系を呈する緑柱石(ベリル/Beryl)の宝石で、アクアマリンやモルガナイトと同じ鉱物グループに属します。
緑柱石(りょくちゅうせき)の化学組成はベリリウムとアルミニウムの珪酸塩(シリケート)で、化学式は Be3Al2Si6O18 、結晶系は六方晶系、モース硬度は7.5-8。
※世界四大宝石とは、天然鉱物の中でも稀少性が高く、宝飾的な価値が高く評価され、長い歴史の中で特に珍重されてきたダイヤモンド、エメラルド、ルビー、サファイアの4つの美しい宝石を指します。
※貴石(きせき)とは、特に高値で取引される宝飾的な価値の高い宝石のことで、プレシャス・ストーン(Precious Stone)とも呼ばれ、貴石以外の宝石は半貴石(はんきせき)やセミ・プレシャス・ストーン(Semi Precious Stone)と呼ばれています。
貴石よりも稀少性の高い、アレキサンドライト、ベニトアイト、グランディディエライト、パライバトルマリン、パパラチアサファイア、インペリアルトパーズ、ビクスバイト(レッドベリル)、デマントイドガーネット、アウイナイトなどの宝石は稀少石やレアストーン(Rare Stone)と呼ばれています。
エメラルドの意味~名前の語源・由来
“エメラルド(emerald)”の名の語源は、”緑色の宝石”を意味する古代ギリシャ語の”スマラグドス(smaragdos)”に由来します。
異綴同音同義語の俗ラテン語”スマラグドゥス(smaragdus)”から次第に綴りや発音が変化し、俗ラテン語”エスマラルドゥス(esmaraldus)”→”エスメラルダ(esmeralda)”→古フランス語”エスメロード(esmeraude)”→中世英語”エメロード(emeraude)”→現代英語”エメラルド(emerald)”に変化していったと考えられています。
エメラルドの和名は”翠玉(すいぎょく)”または”緑玉(りょくぎょく)”。
翠玉の”翠”とはブッポウソウ目カワセミ科の鳥、主に”翡翠(かわせみ)”の雌の羽の色のことで、緑色の意味を持つ漢字です。
エメラルドの歴史
エメラルドは紀元前3000年~1500年の間にはすでに珍重されていた宝石で、古代メソポタミア(紀元前4000~400年頃)、古代エジプト(紀元前3000~30年頃)、古代ローマ(紀元前27年~1453年)等、各地の遺跡から発掘された装飾品にエメラルドがあしらわれており、古代のファラオや皇帝など王族・貴族達を魅了してきた歴史ある宝石です。
絶世の美女と謳われる古代エジプトの女王クレオパトラのエメラルドへの情熱で有名で、エメラルドのあしらわれた装飾品で着飾るだけではなく、粉末にしたエメラルドをアイシャドウにして化粧にも使用していたとも伝えられています。
エメラルドは魔除けや邪気払いのお守りにも用いられており、インカ(1438年〜1533年)やアステカ(1428年~1521年)においては、神聖な石として崇拝されていました。
インカ帝国によって採掘されたエメラルドは、メキシコ、ペルー、チリ、マヤなどのインカ帝国の広大な支配地域各地に伝播しており、結晶を磨き穴をあけてペンダントにするなどの加工が施され、貴重な装飾品として使われていました。
エメラルドの特徴について
天然のエメラルドは激しい接触作用や変成作用により生成されるため、黒雲母や角閃石などの微小な結晶のほか、液体・気泡などの様々な内包物(インクルージョン)を大量に含み、亀裂も多く不透明な結晶が大半なうえ、結晶自体も小さく、宝石質の結晶は僅かしか産出しません。
このため、エメラルドは肉眼で見える内包物(インクルージョン)が比較的多い宝石と一般に認識されています。
エメラルドは他の宝石と同様に、カラー・クラリティ・カット・カラットの4Cにより評価されますが、エメラルドで品質の評価で最も重要な要素となるのがカラーで、内包物(インクルージョン)の存在による評価よりも、緑色の色調と彩度によって評価が大きく変動し、色鮮やかな緑色~青緑色で色が均一なものは高く評価され、青色または黄色に寄っているもの、色が薄いもの、色ムラや色の層ができてしまっているものは評価が低くなる傾向にあります。
見た目がクリアで透明度の高いエメラルドは非常に希少価値が高く、高い彩度と透明度を有するエメラルドは、最高級の宝石と見なされ、特に高く評価されます。
内包物が多く、透明度に欠ける品質の結晶の大半はインドへ輸出され、ビーズ等に加工されます。
インドでは、結婚の証として指輪よりもネックレスを着ける方が一般的な習慣として浸透していることから、インドでは結婚の贈り物としてエメラルドのビーズが伝統的に愛好されています。
エメラルドの産地
エメラルドは南極以外の6大陸から産出があります。
その中でも南米大陸は最も重要で、コロンビアの鉱山で採掘されるエメラルドは高品質で、比較的結晶が大きく、包有物(インクルージョン)の少ないことで知られています。
良質のエメラルドはコロンビア以外にも、ザンビア、ブラジル、ジンバブエ、マダガスカル、パキスタン、インド、アフガニスタン等でも産出しています。
特にザンビア、ブラジル、そしてジンバブエは良質のエメラルドの産地として国際的に高い評判を得ています。
ザンビア産のエメラルドは透明度が高く、コロンビア産よりも、もっと一般的に色調が濃く、青味がかった色合いです。
ブラジル産のエメラルドは、緑色がやや黒味を帯びているのが特徴です。
ジンバブエ産のエメラルドは、小さい結晶が多いながらも色鮮やかな濃い緑色で、黄色味がかった色合いのものが産出します。
宝石の色について
宝石の色の発色には「自色」と「他色」の二種類があります。
自色とは、結晶を組成する主成分に起因して色を発色している鉱物で「イディオクロマティック(idiomatic)」とも言います。
自色を示す宝石はあまり多くはなく、ペリドット、アルマンディン・ガーネット、マラカイト、クリソコラなどがこれに該当します。
他色とは、結晶を組成する主成分以外に起因して色を発色している鉱物で「アロクロマティック(allochromatic)」とも言います。
純粋な結晶が無色透明の宝石は他色のものが多く、宝石の大半は他色を示す宝石に分類されます。
他色の宝石では微量元素が含まれることで発色するものが多く、ベリル、コランダム、スピネル、トルマリンなどがこれに該当します。
他色の宝石の色起源となる微量元素は原子番号22~29の元素が主で、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)などの種類があります。
宝石の種類が異なる場合は、同じ微量元素であっても、異なる色に発色することもあります。
例えば、ベリルにクロムが取り込まれた場合は緑色に発色するエメラルドになりますが、コランダムにクロムが取り込まれた場合は赤色に発色するルビーになります。
このほかに、他色の宝石では自然界の放射性物質や放射線により発色するものもあります。
ジルコンは主成分であるジルコニウムの代わりに、ウランやトリウムなどの放射性元素を微量に含みます。
放射性元素により原子配列に格子欠陥が生じることで光の吸収が起こり発色しています。
ジルコンの結晶は生成されたばかりの時は淡色ですが、億年単位の長い年月の間に徐々に濃色へと変化します。
濃色に変化したジルコンに加熱処理を施すと、原子配列が元に近い状態に戻り、元の淡色に戻ります。
エメラルドの属するベリル(緑柱石)について
不純物が非常に少ない純粋なベリルの結晶は無色透明で、結晶に鉄やマンガンなどの微量元素が取り込まれることで色を発色する他色鉱物(アロクロマティック・ミネラル)です。
微量元素の種類により発色する色は様々で、それぞれ別の異なる宝石として流通します。
ベリル(緑柱石)の一覧 | ||
宝石名 | 色 | 微量元素 |
エメラルド | エメラルドグリーンービリジアン | クロム、バナジウム |
アクアマリン | アクアブルー-ブルー-ブルーグリーン | 鉄 |
ブルーベリル(マシーシェ) | ブルー | 放射線照射 |
モルガナイト(ピンクベリル) | ピンク-ピーチ-ローズ | マンガン |
ビクスバイト(レッドベリル) | レッド-フクシア-ラズベリー | マンガン |
イエローベリル | イエロー-ライトイエロー | 鉄 |
ゴールデンベリル | ゴールデンイエロー-オレンジ | 鉄 |
ヘリオドール | イエローグリーン | 鉄、酸化ウラン |
ゴシェナイト(ゴシュナイト) | カラーレス(無色) | アルミニウム |
◆エメラルド
クロム・バナジウム・鉄の組み合わせによりエメラルドグリーン~ビリジアンを呈するベリル。
通常、クロムまたはバナジウムの含有量が多いほど、より鮮やかな緑色に発色し、鉄の含有量が多くなれば青みがかった発色が強くなるため、鉄の含有量が少なければ、より澄んだ緑色に発色します。
発色に起因する金属イオンの種類によらず、緑色の濃さと彩度がエメラルドと呼ぶに十分であればエメラルドに分類されます。
◆グリーンベリル
クロム・バナジウム・鉄の組み合わせによりペールグリーンを呈するベリル。エメラルドと分類するには緑色の発色が淡すぎる場合はグリーンベリルに分類されますが、どの程度を「淡すぎる」と考えるのかについては見解に相違があります。
◆アクアマリン
鉄に起因してアクアブルー~ブルー~ブルーグリーン を呈するベリル。特に色の濃いものはサンタマリアと呼ばれています。
◆ブルーベリル(マシーシェベリル、マシーシャベリル、マシシベリル)
自然界での放射線照射によってカラーセンターが生じてサファイアの様な青色やタンザナイトの様な紫紺色を呈するベリル。ブラジルのミナス・ジェライス州のピアウイ渓谷にあるMaxixe鉱山から採石されたことから名付けられたベリルです。
◆モルガナイト(ピンクベリル)
マンガンに起因してペールピンク~ピンク~ピーチ~ローズピンクを呈するベリル。アクアマリンよりも希少な宝石ですが、アクアマリンやエメラルドのように一般消費者に幅広く宣伝販売されておらず、認知度・知名度が低いため比較的サイズの大きなルースでも手頃な価格で入手しやすい傾向にあります。
◆ビクスバイト(レッドベリル)
マンガンが起因して赤色~赤紫色~濃赤色を呈するベリル。
◆ゴールデンベリル
鉄に起因してゴールデンイエロー~オレンジを呈するベリル。
◆ヘリオドール
鉄や酸化ウランに起因してイエローグリーンを呈するベリル。
◆ゴッシュナイト(ゴッシェナイト、ゴシェナイト、ホワイトベリル、カラーレスベリル)
不純物の少ない無色透明のベリル。
宝石として研磨されるサイズの結晶で、包有物(インクルージョン)の少ない無色透明の原石は稀にしか発見されないため希少ですが、ダイヤモンド以外の宝石ではカラーレスの需要は高くはないため、比較的安価に流通しています。
エメラルドの石言葉・宝石言葉
エメラルドの石言葉・宝石言葉は、幸運-幸福-安定-愛。
石言葉・宝石言葉とは、一つ一つの宝石に与えられた言葉のことで、各々の宝石の持つ特質や歴史・言い伝えなどから、象徴的な意味をもつ言葉が選ばれています。
石言葉・宝石言葉には、各々の宝石の持つ特質や色が与える心身への影響が研究された心理学が応用されていますので、自身が受ける心理的影響を生かしたセルフマネジメントや、他人に与える心理的影響を活かした印象戦略などに活用することができます。
エメラルドの効果
インドやスリランカでは古来より宝石を用いたセラピーやヒーリングといった宝石療法の文化があり、宝石には病気や怪我、三毒と呼ばれる”三つの煩悩(ぼんのう)”である、貪欲(とんよく: 貪り・妬み)・瞋恚(にんし: 怒り・憎しみ)・愚癡(ぐち: 愚かさ・無知)などから保護する厄除けや加護の力や宿ると考えられてきました。
世界三大伝統医学の一つでインド大陸の伝統的医学の”アーユルヴェーダ(ayurveda)”において、ハート(心臓)付近にあるとされる第4チャクラのテーマカラーは生命力を意味するグリーンで、エメラルドなどのグリーン色の宝石を用いてハートチャクラを開くことで、愛や共感が促され、心と体のバランスが安定すると言い伝えられています。
ハートチャクラを開き、自己受容(ありのままの自分を受け入れること)が促されると自己肯定感が高まり、自分自身への信頼と愛によって、他者へ愛を与えることができるようになるとされています。
愛は与えることと受け取ることとのバランスが大切で、他人に対して無条件の愛を与えることで、他人からの愛を受け取ることができるようになるとされ、人は誰でも無意識的に愛を必要としているため、愛情を受け取ることにより、幸福感がもたらされると考えられています。
エメラルドは水星の宝石
ナヴァラトナ(navaratna)と呼ばれる、インドやスリランカをはじめとするアジア地域の国で神聖なものとして認識されているアミュレット(お守り・魔よけ・護符)においては、エメラルドは水星を司る宝石とされています。
ナヴァラトナとは、太陽系の9つの惑星とそれを神格化した9人の神の”ナヴァグラハ=九曜”が割り当てられた”9つの宝石(ナインストーン)”があしらわれた装身具です。
水星は公転速度が非常に速い惑星であることから、各天体とのメッセンジャーであり、知性とコミュニケーション能力を司る惑星と位置付けられています。
水星を司る宝石のエメラルドは、身につける人に言葉を授け、他者に自分を伝えるための強いスピーチ力を与えてくれると考えられており、知的で独創的な思考を高め、シャープで機知に富む即妙な会話をサポートしてくれると信じられています。
エメラルドは結婚55周年「エメラルド婚式」の宝石
エメラルドは結婚55周年の結婚記念日をお祝いする”エメラルド婚式”の宝石です。
節目の結婚記念日には、互いに日頃の感謝の気持ちを伝えるために、お祝いをする夫婦も多いようです。
結婚55年目を迎える頃には、結婚生活に伴う様々な問題を乗り越え、互いの違いを認め尊重し合う円熟した夫婦として絆を揺るぎないものにしていることでしょう。
“愛”や”安定”の意味を持つエメラルドは、長年連れ添った夫婦の大切な記念日に相応しい品格があり、特別な思いを込めた素敵な贈り物になります。
エメラルドの取り扱いについて
エメラルドはモース硬度が 7.5-8 ありますが、もともと内包物(インクルージョン)や内部亀裂(フラクチャー)の多いデリケートな宝石のため、その取り扱いには注意が必要です。
エメラルドは、フラクチャーを充填するためにオイルや樹脂、ポリマーなどによる含侵処理が施されていることが90%以上で、無処理(ノンオイル)のルースは大変稀少です。
含侵処理が施されているエメラルドは、紫外線や乾燥、液体クリーナーなどの化学薬品、洗浄器などの超音波振動、スチームクリーナーなどによる高温などにより、退色、変質、劣化、破損したりする場合があります。
そのため、普段のお手入れとしては、エメラルドは身に付けた後、マイクロファイバーなどの柔らかな布で優しく拭いて表面の汚れを落とすようにします。
あまり強く拭いてしまうと、拭き傷が付く原因となってしまいますので、強くこすらずに優しく磨くように気を付けて下さい。
拭くだけで汚れが落とせない場合には、エメラルドにも使用できる洗浄液と、宝石お手入れ用の柔らかなブラシを使用して、優しく汚れを落とします。
洗浄液を使用した場合は、洗浄液が残らないよう、しっかり水で洗い流し、水気が残らないように柔らかな布で拭いて下さい。
使用していないときは、色褪せや劣化を防止するためにも、湿度が保たれた暗所で保管するようにしましょう。
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