宝石名 | トルマリン |
英名 | tourmaline |
和名 | 電気石(でんきせき、でんきいし) |
分類 | 珪酸塩鉱物(silicate mineral) |
結晶系 | 三方晶系または六方晶系 |
モース硬度 | 7-7.5 |
靭性 | 普通 |
劈開性 | なし – 一方向に不完全 |
比重 | 3.0-3.26 |
屈折率 | 1.62-1.65 |
分散度 | 0.017 |
光沢 | ガラス光沢-樹脂光沢 |
色 | ブルー、グリーン、イエロー、オレンジ |
レッド、ピンク、パープル、バイオレット | |
カラーレス(無色)、グレー、ブラウン、ブラック | |
誕生石 | 10月 |
石言葉・宝石言葉 | 友情-希望-寛大-潔白 |
トルマリン(tourmaline)は10月の誕生石。
トルマリンは単独の鉱物名ではなく、ホウ素を主要元素とする珪酸塩鉱物(シリケートミネラル)のグループ名です。
トルマリンは化学組成が非常に複雑な鉱物で、主要元素のホウ素のほかに、アルミニウム・鉄・マグネシウム・ナトリウム・リチウム・カリウムなどの様々な化学元素が複雑に入れ替わり、さらにこれらが混ざり合った連続固溶体または部分固溶体を形成するホウ珪酸塩の結晶で、宝石質の結晶体は半貴石(セミ・プレシャスストーン)の宝石として扱われます。
トルマリンは全ての色が揃う宝石で、無色・黄色・緑色・青色・紫色・赤色・ピンク色・橙色・茶色・褐色、黒色など、多彩な色を呈します。
トルマリンには、結晶を加熱すると電荷を生じる”焦電性”=”パイロ電気、ピロ電気”という性質があり、和名”電気石(でんきいし)”の名はこの性質に由来するものです。
また、トルマリン結晶に圧力を加えると、結晶の上部が正に、下部が負に分極する”圧電性”=”ピエゾ電気性”と呼ばれる性質も示します。
圧電性は、1880年にキュリー夫人として有名な”マリー・キュリー氏”の夫で物理学者の”ピエール・キュリー氏”によって発見されました。
そのため、トルマリンは擦ったり、圧力を加えたり、暖めたりすることで静電気を帯びやすく、空気中の塵を吸い付ける性質がありますので、使用しないときは袋や箱などに入れて保管されることをおすすめします。
トルマリンの意味とは?名前の由来について
“トルマリン(tourmaline)”の名の語源は、”mixed gems(混合した色の宝石)”を意味するシンハラ語の”toramalli”に由来しています。
“無い色は無い”と言われるほど多彩な色を呈するトルマリンでは、一石の宝石の中に複数色を呈する”カラーゾーニング(色分布)”がよく見られることに由来しています。
カラーゾーニングが二色の場合はバイカラー、三色の場合はトリプルカラー(トリカラー)、多数の場合はパーティカラーなどと呼ばれています。
カラーゾーニングは色が一部に集中した帯状に見えるものが多いことから”カラーバンド(色帯)”とも呼ばれています。
カラーゾーニングを特徴に持つ宝石はトルマリンのほかにコランダム、水晶などがあります。
カラーゾーニングが起こる要因としては、宝石の原石となる結晶が長い年月をかけて地中でゆっくりと成長していくことにあります。
宝石は金属の微量元素を結晶中に取り込むことで様々な色を呈しているのですが、結晶は成長スピードが大変遅いことから、長い年月をかけて結晶が形成される間に地中の環境が変化してしまうことが度々あり、地中の温度に変化が生じたり、取り込まれる微量元素の量や種類が変化してしまうために起こります。
トルマリンの種類について
ナトリウム電気石グループ
苦土電気石(くどでんきせき) | ドラバイト(dravite) | ナトリウムやマグネシウムを多く含むトルマリン |
鉄電気石(てつでんきせき) | ショール(schorl) | ナトリウムと鉄を多く含むトルマリン |
リチア電気石(りちあでんきせき) | エルバアイト(elbaite) | ナトリウム、リチウム、アルミニウムを含むトルマリン |
カルシウム電気石グループ
灰電気石(かいでんきせき) | ウバイト(uvite) | カルシウムとマグネシウムを多く含むトルマリン |
鉄灰電気石(てつかいでんきせき) | フェルバイト(feruvite) | 鉄を含む灰電気石 |
リディコート電気石(りでぃこーとでんきせき) | リディコータイト(liddicoatite) | リチア電気石のナトリウムの半分以上がカルシウムに置き換わったトルマリン |
苦土電気石(ドラバイト/dravite) NaMg3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
苦土電気石(ドラバイト/dravite)とは、濃黄色~茶色~褐色のトルマリンです。
ナトリウムやマグネシウムを含むトルマリンで、ブラウントルマリンとも呼ばれています。
苦土電気石はリシア電気石や鉄電気石など、他のトルマリンと混晶して連続固溶体を形成します。
苦土電気石の英名のドラバイト(dravite)の名は、イタリアの南チロル地方に源泉を発して、スロベニア、クロアチア北部を東流して、クロアチアのオシエク東方でドナウ川に注ぐドラーヴァ川・ドラバ川(Drave)の周辺で発見されたことから、川の名に因んで命名されました。
苦土電気石の変種に、深緑色を呈する”クロム・ドラバイト”や”バナジウム・ドラバイト”があります。
鉄電気石(ショール/schorl) NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
最も一般的なトルマリンはナトリウムと鉄を多く含むトルマリンの鉄電気石(ショール/schorl)です。
鉄電気石(schorl)とは、茶色~褐色~黒色のトルマリンで、自然界に存在するトルマリンの95%以上を鉄電気石が占めると言われています。
鉄電気石の歴史は古く、現在のドイツ・ザクセン州にある「Zschorlau」という村でトルマリンが見つかったことから、1400年頃よりドイツ語で「schürl」と呼ばれるようになり、18世紀以降には「schörl」の名が使われるようになったと言われています。
リシア電気石(エルバイト/elbaite) Na(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
リシア電気石(エルバイト/elbaite)はナトリウム・リチウム・アルミニウムを含むトルマリンで、苦土電気石(ドラバイト/dravite)、リディコート電気石(リディコータイト/liddicoatite)、鉄電気石(ショール/schorl)で構成されています。
宝石としてのリシア電気石は、色が多彩で、発色が良く、結晶の純度の高さから、トルマリングループの中で最も理想的なトルマリンです。
リシア電気石の英名のエルバイト(elbaite)の名は、1913年にイタリアのエルバ島(elba)で発見されたことから、地名に因んで命名されました。
リシア電気石は、純粋な結晶は無色透明の結晶で、微量元素が含まれることで発色する他色鉱物(アロクロマティックミネラル/allochromatic mineral)であり、虹のすべての色がリシア電気石で表現されるとも称される色彩豊かな宝石です。
トルマリンの宝石について
■パライバトルマリン(Paraiba Tourmaline)
リシア電気石の中で最も高く評価される宝石が”パライバトルマリン(Paraiba Tourmaline)”です。
パライバトルマリンは比較的歴史の新しい宝石ですが、世界三大希少石と呼ばれるほど産出量の少ない稀少な宝石です。
リシア電気石(エルバイト/elbaite)に微量の銅が含有されることに起因して発色する、透き通った海の色のようなブルーやグリーンのネオン色を発色する美しい宝石です。
パライバトルマリンの名前は、ブラジル北東部にあるパライバ州で発見されたことから、産地に因んで命名されました。
パライバトルマリンの主要産地は、ブラジル(パライバ)、モザンビーク、ナイジェリア、スリランカなどです。
■ルベライトトルマリン(Rubellite Tourmaline)
リシア電気石の中でパライバトルマリンに次いで価値のある宝石とされるのが、赤色またはピンク色を呈するトルマリンの”ルベライト(Rubellite)”です。
ルベライトもまた、リシア電気石の中でも稀少な宝石とされています。
ルベライトの主要産地は、アフガニスタン、ブラジル、マダガスカル、ミャンマー、ナイジェリア、ロシア、アメリカ合衆国などです。
■インディゴライトトルマリン(Indigolite Tourmaline)
■インディコライトトルマリン(indicolite Tourmaline)
ルベライトに次いでリシア電気石の中で人気の高いトルマリンが、青色を呈する”インディゴライト(Indigolite)”=”インディコライト(indicolite)”です。
“インディゴライト(Indigolite)”の名前は、人類が最も古くから利用した青色染料とされるタデ科の植物”藍(あい)”の英名”インディゴ(indigo)”です。
デニムの染料として広く知られている染料の”インディゴ(indigo)”の語源は、インド北部原産の藍を意味するギリシア語の”indikon”で、これがラテン語の”インディクム(indicum)”からポルトガル語を経て、英語の”インディゴ(indigo)”に変化しました。
インディゴライトは、その色のトーンと彩度によって通常のブルートルマリンとは区別され、インディゴブルーと言える濃いブルーの色調と鮮やかな彩度を持つものが理想的とされています。
1カラット以上で発色が良く、透明度の高い結晶は非常に稀少です。
インディゴライトの主要産地は、ブラジル、ロシア、メキシコ、パキスタンなどです。
■バーデライトトルマリン(Verdelite Tourmaline)
リシア電気石の中で、緑色を呈するトルマリンがバーデライト(verdelite)で、グリーントルマリンとも呼ばれます。
バーデライトは黄緑色~緑色~緑青色など、幅広い緑色系を呈するグリーントルマリンです。
緑青色の場合はブルートルマリンやインディコライトとの区別が曖昧になる場合もありますが、緑色が優勢であれば、バーデライトと呼ばれます。
良質のエメラルドのような濃い緑色のグリーントルマリンは、微量元素のクロム(時にはバナジウムも含有)により発色していることから”クロームトルマリン”と呼ばれ、バーデライトとは区別されます。
■アクロアイトトルマリン(Achroite Tourmaline)
リシア電気石の中で、不純物の少ない無色の純粋なトルマリンが”アクロアイト(achroite)”です。
“アクロアイト(achroite)”の名は、”無色”を意味する古代ギリシャ語の”άχρωμος”=”achromos”に由来します。
アクロアイトは、トルマリンの中で最も稀少ですが、宝飾業界ではダイヤモンド以外の無色透明の宝石は宝飾用途での需要があまりないため、トルマリンの中で最も安価です。
しかし、無色のトルマリンのアクロアイトは珍しいため、コレクターの間では珍重されています。
宝石の色について
宝石の色の発色には「自色」と「他色」の二種類があります。
自色とは、結晶を組成する主成分に起因して色を発色している鉱物で「イディオクロマティック(idiomatic)」とも言います。
自色を示す宝石はあまり多くはなく、ペリドット、アルマンディン・ガーネット、マラカイト、クリソコラなどがこれに該当します。
他色とは、結晶を組成する主成分以外に起因して色を発色している鉱物で「アロクロマティック(allochromatic)」とも言います。
純粋な結晶が無色透明の宝石は他色のものが多く、宝石の大半は他色を示す宝石に分類されます。
他色の宝石では微量元素が含まれることで発色するものが多く、ベリル、コランダム、スピネル、トルマリンなどがこれに該当します。
他色の宝石の色起源となる微量元素は原子番号22~29の元素が主で、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)などの種類があります。
宝石の種類が異なる場合は、同じ微量元素であっても、異なる色に発色することもあります。
例えば、ベリルにクロムが取り込まれた場合は緑色に発色するエメラルドになりますが、コランダムにクロムが取り込まれた場合は赤色に発色するルビーになります。
このほかに、他色の宝石では自然界の放射性物質や放射線により発色するものもあります。
ジルコンは主成分であるジルコニウムの代わりに、ウランやトリウムなどの放射性元素を微量に含みます。
放射性元素により原子配列に格子欠陥が生じることで光の吸収が起こり発色しています。
ジルコンの結晶は生成されたばかりの時は淡色ですが、億年単位の長い年月の間に徐々に濃色へと変化します。
濃色に変化したジルコンに加熱処理を施すと、原子配列が元に近い状態に戻り、元の淡色に戻ります。
トルマリンの歴史について
トルマリンは何世紀も前から宝石として利用されていましたが、近代鉱物学が発達するまでは、その色調からルビー、サファイヤ、エメラルドなどの他の宝石と混同されていました。
トルマリンは、加熱すると電気を帯びて、チリや灰を引き寄せたり、反発させる性質があるため、西洋では「セイロン磁石」とも呼ばれました。(セイロンとはスリランカの旧称)
この性質は静電気とも似ていますが、摩擦ではなく加熱によって静電気を帯びる性質のため、焦電性やパイロ電気性と呼ばれます。
19世紀には、宝石質のトルマリン結晶の薄片に光を透過させると、特定方向の直線偏光成分だけを透過させ、垂直な方向の偏光成分は反射させたり吸収させたりする、光を分離する性質が発見されました。
これはトルマリンの強い多色性(たしょくせい)=プレオクロイック(pleochroic)によるもので、偏光面と結晶軸、観察方向の位置関係によって結晶の色が異なる色に見える光学的な性質に関係しています。
トルマリンの産地について
20世紀前半にブラジルでトルマリンの大きな鉱脈が発見され、トルマリンの供給が拡大しました。
その後、1950年代頃より世界各地でトルマリンの鉱床が発見されるようになりました。
マダガスカルやアフガニスタンでは、上質のルベライトが産出することが知られています。
トルマリンの石言葉・宝石言葉
トルマリンの石言葉・宝石言葉は、友情-希望-寛大-潔白。
石言葉・宝石言葉とは、一つ一つの宝石に与えられた言葉のことで、各々の宝石の持つ特質や歴史・言い伝えなどから、象徴的な意味をもつ言葉が選ばれています。
石言葉には、各々の宝石の持つ特質や色が与える心身への影響が研究された心理学が応用されていますので、自身が受ける心理的影響を生かしたセルフマネジメントや、他人に与える心理的影響を活かした印象戦略などに活用することができます。
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