ガラスパール(グラスパール)とは、本真珠を模して作られる【イミテーションパール(模造真珠)】の一種で、【パールエッセンス】と呼ばれる、塗布すると真珠のような光沢を呈するパール塗料を、ガラスでできた原珠を核にして塗装して作られる【人工真珠】のことです。
ガラスパールの歴史は古く、20世紀初頭に【コスチュームジュエリー(Costume Jewelry)】、フランス語でいう【ビジューファンテージ(Bijou de fantaisie)】の素材として誕生し、現在では世界各国で製造されています。
↓こちらの記事にイミテーションパールの歴史について詳細をご案内しております。
ガラスパールの作成は原玉となるガラス玉の成形からはじまります。
原玉となるガラス玉の主な成形方法の技法や種類についてご紹介いたします。
■ガラス塊を研磨して成形したガラス玉を原玉にしたガラスパール
機械でガラス塊を削り、研磨して成形しているので、ほぼ真円に近い均等な形状の両穴のガラス玉を成形することができます。
人件費の安いアジア圏で大量生産されたガラス玉が世界中に輸出・供給されているので、原価コストを抑えたガラスパールを製造することができます。
■機械巻きのガラス玉を原玉にしたガラスパール
熱して溶かしたガラスを、機械を使い鉄の芯棒に巻き取って成形しています。
一粒一粒の形状が異なるクラフト感の溢れるガラス玉に成形することができます。
意図的にバロックパールのような歪な形状にしたり、サークルのような線を入れたり、銅板を使い凹凸の模様を入れたりと、表面のテクスチャーのカスタマイズも可能です。
ガラスの巻き取りに機械を使っているものの、高い成形技術が必要となるため、熟練のガラス職人が作成しています。
機械巻きガラスの原玉を作成できるガラス職人は日本国内に数えるほどしかいないため、高級品のガラスパールになります。
■ガラス細工のガラス玉を原玉にしたガラスパール
【ランプワーク(バーナーワーク、トーチワーク、フレイムワーク)】により、一つ一つ手作業でガラス玉(トンボ玉)を成形しています。
ガラス細工のトンボ玉は成形できる形状の自由度が高く、バロック型やしずく(ドロップ)型などの特殊な形状はもちろんのこと、機械巻きでは作れない片穴のものを成形することができます。
サークルのような線を入れたり、銅板を使い凹凸の模様を入れたりと、表面のテクスチャーのカスタマイズも可能です。
ランプの炎やバーナー(トーチ)の熱でガラスを溶かして造形する技法のランプワークには、高い成形技術が必要となるため、熟練のガラス職人が作成しています。
一粒一粒、ハンドメイドで成形したガラス細工が原玉となるため、最高級品のガラスパールになります。
この他にも、星形やハート形などのガラス玉を作る際に使用される【型押し法】と呼ばれる、溶かしたガラスを凹型に流し込み、凸型を押し付けるように挟み込んで成形する技法や、溶解炉で溶かしたガラスを鋳型に流し込んで成形する【ホットワーク(ホットキャスト)】などの技法で作られたガラス玉を原玉もあります。
パール塗料の塗装・仕上げの種類についてご紹介します。
ガラスパールはガラス原玉にパールエッセンスを塗布すると完成になりますが、パールエッセンスそのものの品質や調色、パールエッセンスを塗布する技術によって、色合い・輝き・光沢感などの仕上がりに差が生じます。
日本国内の工房では、ガラスの原玉にパールエッセンスを塗り、乾燥させてはまたパールエッセンスを塗り乾燥させる、という工程を何度も繰り返すことで塗装の層を厚くしたり、パールの表面に気泡が付いてしまわないよう、原玉を静かにパールエッセンスに浸しては乾燥させる丁寧な手仕事と熟練の技術が継承されているため、パールエッセンスの層の厚みが均一で、仕上がりも滑らかで綺麗です。
アジア圏で塗装を施したガラスパールも流通していますが、パール塗料の調色が今一つだったり、パール塗料の層が薄かったり、塗りムラがあったりと、日本国内の工房で仕上げられたものに比べて見劣りするという印象です。
■ミガキ仕上げ(ミガキパール)
【ミガキパール】とは原玉にパールエッセンスを塗り、乾燥させてはまたパールエッセンスを塗るという作業を何度も繰り返すことで、人工的に真珠層を作り出し、最後の仕上げにミガキと呼ばれるオーロラ加工を施したイミテーションパールのことです。
表面が艶やかに磨かれることで生まれる、まるで本真珠のようなオーロラ様のように多彩に輝く照りと光沢が特徴になります。
ミガキパールを作成する設備と技術を持つ職人は今や日本に3名しかいないことや、作業工程が多くなりコストが高くなってしまうことから、ミガキは通常は貝を原玉にしたイミテーションパールの【貝パール(シェルパール)】に用いられる塗装・仕上げとなりまして、ガラスパールのミガキは特注オーダー品となることから、ミガキが施されたガラスパールは世界においてもほとんど流通していません。
メイド・イン・ジャパンのガラスパールに思うこと。
日本製のガラスパールはかつて世界市場で高いシェアを誇り、世界中に輸出されていました。
しかしながら、安価に大量生産されているアジア圏のイミテーションパールに世界市場のシェアを奪われて輸出量は激減し、日本製ガラスパールの生産量も減少して、業界全体が低迷してしまい、現在では後継者難により廃業してしまった工房も多く、代々の技術を継承している職人が年々少なくなってしまっているといいます。
アジア圏のイミテーションパールの顕著な躍進の背景には、日本製品に比べて品質面では劣っているものの、品質の違いよりも価格を重視する傾向にあるアメリカ市場においてシェアを著しく拡大させていることにあるようです。
かつては完成度の高さから世界中で愛されていた日本製のガラスパールが年々市場から姿を消してしまっていることを大変残念に感じるとともに、クオリティの高い国産ガラスパールの需要拡大に少しでも貢献できたらと考え、弊社では日本国内の各工房と連携して共同開発した復刻ヴィンテージ仕様の純国産ガラスパールを通信販売しています。
以下、リンク先の弊社ネットショップにて取り扱いしております。